出場からわずか1分で決勝弾!不屈の男・上原慎也が故郷の琉球で決めた1点の価値

2019年06月02日 仲本兼進

「みんなの思いとサポーターの思いがひとつになって生まれたゴールだと思っています」

上原は途中出場した15節の新潟戦で会心の決勝点を決めた。(C)J.LEAGUE PHOTOS

 J2リーグ15節の新潟戦。タピスタのピッチに85分から姿を表した上原慎也は燃えていた。
 
「ホームで絶対に勝ちたかったし、チームも前に行けていたので、そのなかで僕自身点を取りたいと思っていました」
 
 この試合、先制FKを決めた富所悠と代わり登場した上原は、その前の岡山戦で今季初出場を果たしたばかりだった。右膝にテーピングを巻いた姿でピッチに入った瞬間、ダッシュでポジションに向かう上原の姿に観客も高揚感が沸き立ち固唾をのむ。
 
 すると86分。一瞬の出来事だった。新潟の猛攻を受けながらもゴール前で耐え続ける琉球は、GKカルバハルのスローイングの流れからCB増谷幸祐にボールが渡ると、パスを受け取ったSB西岡大志が右サイドから攻める。その瞬間、上原が新潟の最終ラインの手前で左腕を上げて合図を送り、それを見た西岡は躊躇すること無くファーサイドにアーリークロスを放った。
 
「練習から(西岡)大志にクロスを入れてもらってヘディング練習をしていました。大志もなかなか練習ではクロスボールが上がらなくて苦しんでしましたが、練習はどうであれ試合であそこまで集中して良いボールが上げられるのはやっぱり西岡選手の練習の賜物だと思います。そこで僕も合わせることが出来たのでほんとに良かったなと思います」
 

 西岡の放ったボールは大きな弧を描き、新潟DF陣の頭上を超えて上原の頭に吸い寄せられる。相手GKがゴール左を警戒しているところを目視した上原はその瞬間、ダイビングヘッドではなくボールコントロールでのヘディングを選択。身体をひねりながら額の中心から左寄りでインパクトしたボールは一見大きくゴールラインを割るかのように見えたものの、バウンドした瞬間、強烈な回転がかかりゴールへと向かう。虚をつかれたGK大谷幸輝はなんとか左足に重心をかけ横っ飛びを見せるも、ボールは手をかすめることなくゴール内のサイドネットを揺らした。
 
「(チーム)みんなの思いとサポーターの思いがひとつになって生まれたゴールだと思っています」
 
 上原の2年10か月22日ぶりのゴールが故郷・沖縄のFC琉球で生み出された瞬間だった。
 

次ページプレー時間は限定されるも、上原の存在感は日に日に増している。

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