浦和vs.湘南の誤審騒動を経て「判定の可視化」の議論は新たな局面へ!? ゴールネットの網目やモノの置き場にも一考の余地あり?

2019年05月21日 塚越 始

実際、記者席からでも、状況整理するのに時間を要した

明らかなゴールが認められず、曺監督以下、湘南の選手・スタッフたちが猛烈な抗議。しかし、判定は覆らず。写真:滝川敏之

 浦和レッズ対湘南ベルマーレ戦、杉岡大暉のシュートがサイドネットを揺らしたものの認められなかった。審判団がゴールを見逃す「世紀の誤審」が起きたことにより、VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)、ゴールラインテクノロジー(GLT)の導入は、もはや是非を問うものではなく、どのタイミングでどのように導入するかに踏み込んだ議論に進むことになるだろう。

 
 ただ一方、湘南の曺貴裁監督が「世の中のAI化が進み、サッカー界にもテクノロジーが入ってくる時代。その中でも人がいることの喜び、人がいることで上を目指す、そういったふうにしなければならない」と、人と人が高め合う〈スポーツ〉であるべきだという点も強調していた。
 
 西川周作は「あれは確実に入っていました」とゴールしていたことを認め、「切り替えよう」と声を掛けてボールをセンターサークルのほうへ投げた。
 
 1-2と1点差に詰め寄ったはずだった湘南の選手たちも杉岡とハイタッチをしている。しかし、山本雄大主審が大きくジェスチャーで「プレーオン」と指示。これに促され長澤和輝は振り向いてドリブルを開始し、慌てて前線にいたマルティノスとアンドリュー・ナバウトも駆け出す。マルティノスのパスを受けてシュートを試みたナバウトがGK秋元陽太に止められて負傷……。そこで山本主審は笛を吹いて、試合を止めた。
 
「何が起きているのか、さっぱり分からなかった」(西川)
「(湘南の)ゴールが決まったと思ったが、オフサイドか何かがあったのだろうか? と思った」(ナバウト)
 
それは埼玉スタジアムにいたほとんどの人が思ったことでもある。実際、記者席からでも、状況整理するのに時間を要した。確か、杉岡のシュートは入ったはずだった。見間違えた? 反則があった? DAZNで確認したところ、同じく謎のシーンについて議論している。そこで、ようやく「審判がゴールを見逃した」という、あり得ないミスが起きていると把握した。
 
 そして試合後、選手たちも、湘南の曺貴裁も、声を揃えて言っていた。
「そこで、どうすれば良かったのか、正直、分からない」
 
 プレゼントゴールをすべきだったのではないかという声が出ている。それは違う。明らかに自チームの行為で瑕疵があったときにするもので、今回のケースは該当しない。そもそも過去にこのような事例は聞いたことがない。サッカーくじ(toto)に影響する事案でもある。それらをこの状況で、選手や監督に判断を仰ぐべきではない。
 
 一方、湘南の梅崎司は声を震わせて、「絶対に、『美談』では済ませてほしくない」と強調していた。
 

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