「欧州カップ戦のために、とは考えない」のになぜ有望株が集まるのか? ドイツ屈指の”育成処”フライブルクのブレない哲学【現地発】

2019年05月15日 中野吉之伴

”育成クラブ”としての立場を確立

ギンター、カリジュリ、フィリップはともにフライブルクの下部組織出身だ。 (C) Getty Images

 ブンデスリーガは残すところあと1試合。優勝争いは続いているが、現時点ですでに成功を祝えるチームがある。そのひとつがフライブルクだ。残留をいち早く決定し(最終節を残して13位)、大きなストレスなくシーズンを終えることができる。

 基本的に自クラブ以外を敵視する傾向が多いブンデスリーガ各クラブのサポーターだが、フライブルクに対してシンパシーを抱くサポーターはかなり多い。どのクラブのファンに聞いても、「フライブルクはいいよね」と返してくれる。

 フライブルクの良さは、いつまでも変わることのない、ブレない哲学にある。90年代初頭にフォルカー・フィンケはクラブを初めて1部に導くと、「ショートパス主体にマイボールを大事にするオフェンシブサッカー」という自分たちのサッカースタイルを確立させ、それを育成へと落とし込んだ。

 02年にドイツサッカー連盟(DFB)が各クラブに、育成施設のプロフェッショナル化を推奨し始めるずっと前から、自分たちで育成哲学を持っている。継続性を大切にし、自前の育成アカデミーで大事に選手を育て、プロデビューをさせる。

 現に、マティアス・ギンター(ボルシアMG)、マキシミアリアン・フィリップ(ドルトムント)、ダニエル・カリジュリ(シャルケ)など、ここでブレイクスルーを果たした選手はトップクラブからのオファーを受け、高額の移籍金を残して羽ばたいていく。

 そして、その資金をもとにまた育成へと投資をする。フライブルクはそうした自分たちの仕事ぶりに誇りを持って取り組んでいるのだ。

 世間的には「プロクラブである以上、上を目指すのが当然だ」という声もあるかもしれない。そこで一度、育成アカデミーダイレクターのアンドレアス・シュタイエルトに尋ねてみたことがある。

 例えば、フライブルクは2013年に5位でフィニッシュし、翌シーズンのヨーロッパリーグ(EL)プレーオフの出場権も手にした。が、主力選手は軒並み移籍でクラブを去り、本戦出場を果たすことができなかった。

 主力選手を残留させたり、同等レベルの補強を行ったりして、常にEL出場を目指すようなチーム作りをするつもりはクラブとしてないのだろうか、と。

次ページ貫いた哲学がやがてクラブの強みとなる

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