「メッシの拒否権」はあるが…アビダルSDなどバルサの強化部門は極めて有能だ

2019年05月07日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

合議制で強化部門の仕事を進める。

アビダルSD(右)など強化部門の面々は、バルトメウ会長(中央)と上手く連携しながら仕事を進める。(C)Rafa HUERTA

 バルセロナの強化部門/フロントは、ここ2年で大きく変化している。

 17年夏にアカデミーのトップだったペップ・セグーラをフットボールディレクターに昇格させ、18年夏にはエスパニョールやヘタフェのSDを歴任したラモン・プラネス、そして元プレーヤーのエリック・アビダルをそのアシスタントとしてSDに据えて、連携の取れた強力なチームを作り上げた。

 選手獲得などに関する最終的な意思決定権はジョゼップ・マリア・バルトメウ会長にあるが、監督とアカデミーマネジャーを歴任してきた元指導者のセグーラ、元選手で叩き上げのSDであるプラネス、そしてクラブOBで世界的な知名度も備えたアビダルという3人がうまく役割を分担しつつ、合議制で強化部門の仕事を進めている。

 スカウティングに関しては、レアル・マドリー同様黙っていても情報が入ってくる立場にあるが、バルサというある意味で特殊なチームに合ったプレーヤーを的確に絞り込み、確実に手に入れる手腕を持っている。

 来シーズンに向けては、アヤックスとの良好な関係性があるとはいえ、先手を打ってMFフレンキー・デヨングの獲得を決め、さらにCBマタイス・デリフトの獲得交渉も優位に進めるという仕事ぶりからも、彼らの有能さは明らかだ。
 
 強化部門の手腕は「買い」だけでなく、「売り」でも問われる。今夏のバルサはFFPの規準をクリアするために、6月30日までにおよそ2500万ユーロ(約32億5000万円)の売却益を挙げる必要があるので、それがひとつの試金石になるだろう。

 第2GKのヤスパー・シレッセンをはじめサミュエル・ウンティティ、マルコム、デニス・スアレス(今シーズン終了までアーセナルにレンタル中)などが放出リストに入っている。例えばウンティティは膝に問題を抱えているだけに、どれだけの値段で売れるかは注目だ。

 以前は無償で引き抜かれるばかりだったカンテラの若手も、一度プロ契約を交わした上で資産とし、それから換金するようなやり方が必要になっている。

 チームマネジメントには、大きな問題は抱えていない。しかし、リオネル・メッシという巨大な存在に条件付けられている部分があることは否定できない。メッシはマドリー時代のクリスチアーノ・ロナウドのように自らの要求をクラブに突きつけるタイプではないが、強い拒否権を持っていることは明らか。それが補強を含めたクラブの意思決定に制約を与えている側面はある。

[バルセロナの強化部門&フロント採点]
●スカウティング:9点
●交渉力:9点
●チームマネジメント:8点
(すべて10点満点)

文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
※ワールドサッカーダイジェスト2019年5月16日号より転載。

【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にジョゼップ・グアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
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