【長崎】手倉森監督はガンバで燻っていたストライカーをどんな言葉で覚醒させたのか?

2019年04月29日 藤原裕久

課題とともに良さも見つける「お前は日本代表にもなれる」

得点力アップが著しい長崎の攻撃を牽引する呉屋(左)とチームを率いる手倉森監督。11節終了時で4勝3分4敗の10位につける。(C) J.LEAGUE PHOTOS/徳原隆元

 開幕から得点力不足に苦しんでいた攻撃に変化が生まれている。3月はリーグ5試合で得点数1、4月に入っても8節終了時点でリーグ最少の4得点にとどまっていた得点数は、11節終了時点の現在で11にまで増加した。それまでの決定力を考えれば爆発的とも言える得点力の向上だが、その中心を担っているがFW呉屋大翔だ。

 
 大学在学中にあらゆるタイトルを総ナメにし、3年連続リーグ得点王にも輝いた世代トップのFWだった呉屋。だがガンバ大阪に加入後は思うような結果を残せず、今季も呉屋はガンバ内で3番手、4番手のFWと見られていた。一方、開幕から得点力不足に苦しむ長崎は、相手DFの裏へ飛び出せるFWの緊急補強を検討しており、その候補となったのが呉屋だったという。
 
 長崎からオファーに「環境を変えた方が良い」と感じた呉屋は、すぐさま期限付移籍を決断。チームに合流してわずか6日後の6節、大宮戦で早くも途中出場し、「ずっとコンディションが良くて、試合に出られる状態をキープできていた」という言葉どおりにキレのある動きを披露した。続く7節の柏戦でも先発入りし、周囲との連係が深まってきた9節の岐阜戦では2ゴールを奪ってチームの勝利に貢献。続く栃木戦でも1ゴールを記録。これまでの出場6試合で3ゴールというハイペースで得点を重ねている。
 
 加入して1か月でチームのトップスコアラーとなった呉屋だが、自身も認める「ボールを出される側の選手」だった彼が、連係を深める時間もない中で、結果を出せている理由は何か。それは手倉森監督のアドバイスと本人の対応力だ。
 
 狭いエリアでポゼッションのトレーニングをしていた時、集中力を欠いたプレーをする呉屋を見て、手倉森監督は「単純に止めて蹴るプレーを軽く見るところがある」と感じたという。同時にそんなプレーの中でも良い位置に動けているとも感じて、こう言葉をかけた。
 
「味方にシグナルを送らないと、お前が何も考えてないように見えるぞ。狭い中でも足もとにボールを収めることができるようになれば、お前は日本代表にもなれる」

次ページ加入前よりも周囲に使われるだけでなく、使うプレーが増加

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