ミシャスタイルの"土台"は技術ではなくハードワーク。3連敗からの2連勝で明らかになった札幌の実情

2019年04月27日 斉藤宏則

連敗から連勝へと流れを変えたのは、ハードワークへの原点回帰だった

C大阪、横浜に連勝した札幌。11戦負けなしを記録した昨季を思い起こさせるパフォーマンスを披露した。写真:山崎賢人(サッカーダイジェスト写真部)

「晴れの日もあれば、雨の日もある。天気と同じ」
 
 今季の北海道コンサドーレ札幌についてミシャ(ペトロヴィッチ監督の愛称)はそのように例えた。開幕戦でいいところなく湘南ベルマーレに敗戦。その後は浦和レッズと清水エスパルスを下したかと思えば、そこからミシャ体制下初の3連敗。かと思えばセレッソ大阪、横浜F・マリノスと続けて撃破をした。
 
 とりわけ清水戦では5得点の大勝。そこから3戦9失点の崩壊を経ての2試合連続完封勝利。果たして今季の札幌は強いのか、そうではないのか。評価が難しい。「調子の波があるのが、現在のチーム状態」と指揮官も説明する。
 
 ただし、そうした波乗りを経てひとまずの着地点は見つかった印象だ。C大阪戦、横浜戦での戦いぶりが当面の答えと言えるだろう。
 
「慎重になりすぎた感はある」と宮澤が振り返るC大阪戦は、まずは連敗を止めるべく、守備網をしっかりと整えた。そしてボールを奪えば主にサイドで連動性を発揮し、なるべくリスクを取らずに攻める。そして後半途中にCKを得ると、狙い通りの形から進藤が頭でゲット。1点を粘り強く守って逃げ切った。

 続く横浜戦では開始早々に先制点を奪ったこともあり、その後は通常時以上に前がかりになった相手に対して清水戦同様に鋭いカウンターを発動。前半だけで3得点を奪い、そのまま3-0で完勝してしまった。
 
 そうして連敗から連勝へと流れを変えたのだが、キーポイントとなったのは戦術的な部分だろう。3連敗を喫するまでは、どの相手ともオープンな攻め合いを挑んでいた。結果、ハマれば完勝するし、先手を取られれば敗れる。そうした推移だった。そこからC大阪戦、横浜戦ではソリッドな戦いを徹底し、リベロにも配給力のある宮澤ではなく速さ、強さのあるキム・ミンテを起用。相手のFWを個の力で封じる戦いに転じ、それが奏功した。
 
 横浜戦で見事な直接FKを沈めた福森は言う。「清水戦で自分たちの実力以上の結果が出てしまい、油断が出て連敗を生んでしまった」と。
 
 昨季はクラブ史上最高の4位でフィニッシュ。ミシャ体制初年度としては予想を上回る好成績だった。「今季、周囲からの期待はかなり高まっている」(ペトロヴィッチ監督)と同時に、自信を得たチームが高みを目指すあまり足下が疎かになっていたのかもしれない。チームのマインドを変えるべく「超攻撃的サッカー」とぶち上げ続けるミシャスタイルを、一足飛びに演じようとしていたのかもしれない。実際にC大阪戦を前に宮澤が「やはり自分たちのベースになるのは運動量とハードワーク。それを思い出さなければいけない」と言い、時を同じくしてGKク・ソンユンも「初心に返る必要がある」と発した。

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