苦戦して勝ったのは今季初。"名古屋らしくない"粘り勝ちが持つ小さくない意味

2019年04月22日 今井雄一朗

劣勢に過ぎた試合を振り返るうえで注視すべき点は?

劣勢のなかでもチャンスを逃さなかったジョー(右)の決定力は流石だった。写真:徳原隆元

 [J1リーグ8節]名古屋1-0磐田/4月20日(土)/豊田ス

 よくよく考えれば、苦戦して勝ったのは今季初めてかもしれない。

 3-2の打ち合いになったガンバ大阪戦でさえ、名古屋グランパスはその持ち味を存分に発揮して勝利を掴んでいる。その他の苦戦はFC東京戦にせよ、鹿島アントラーズ戦にせよ、結果は敗戦である。引き分けた前節の横浜F・マリノス戦も、特徴をより表現したのは相手だったと思う。
 
 自分たちの持ち味をかなり消されていたにも関わらず、粘り強く勝利にたどり着いた今節の内容は、名古屋にとっては少なくない意味を持つのではないだろうか。

 前半を終えてシュート0本という名古屋らしくなさの極致を見た試合は、ジュビロ磐田にとっては悔やんでも悔やみきれないものでもあった。

 アダイウトンとロドリゲスの馬力を生かしたロングボール戦術は、山田大記と松本昌也、そして田口泰士の3センターによる強力なフィルターが機能したディフェンスとも相まってかなりの効果を挙げていた。

 名古屋のビルドアップを阻む策は各チームそれぞれの色が出るが、磐田は最も単純な形でそれを実行に移している。2トップにDFライン及びジョアン・シミッチへのプレッシャーを徹底させ、中央突破の引き金となる縦パスに対しては山田と松本の機動力を"餌"にして田口がことごとく引っかけた。キーマンもキープレーもふさがれた名古屋はコンタクトプレーも激しい相手にペースを作れず、呼吸困難なゲーム展開に陥った。

 後半もその展開は基本的には変わらず、しかしコーナーキックのこぼれ球からジョーが嗅覚鋭くゴールを決め、それが決勝点になって名古屋は勝利している。エースの得点でホームでの勝点3を得たことは何ものにも代えがたい貴重なものだが、劣勢に過ぎたこの試合を振り返るうえでは、もっと注目しなければいけない点があるのもまた確かだ。
 
 例えば、磐田はこの試合で6度の決定機を生み出したが、うち3度はGK武田洋平の好守に阻まれたものだった。ランゲラックが前節で脳震盪を起こし、今節の出場を見送るなかで出番が回ってきた実力派は、守備の連係を中心に準備を進めてくるなかで、己の状態を上げることも怠っていなかった。
 
 62分の決定機阻止は特筆もので、FKに飛び込みフリーで合わせたアダイウトンのヘディングシュートを、右手で弾いてポストに当ててみせた。そのこぼれ球を米本拓司がこれまたバーに当ててかき出したことも驚きだったが、「ほんとは自分がかき出したかったんですけどね。遅れ気味でも触れてよかったです」と振り返る冷静さは彼の実力を物語っている。

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