ブンデスの残留争いが佳境に。原口元気、久保裕也は救世主になれるか?【現地発】

2019年04月22日 中野吉之伴

残り4節でどこまで勝点を伸ばせるか―――。

残留争いの渦中にあるニュルンベルクの久保裕也(左)、そしてハノーファーの原口元気(右)。 (C) Getty Images

 ブンデスリーガも残すところあと4節。今回は残留争いをチェックしてみよう。

 2部リーグに自動降格する17、18位、そして2部チームとの入れ替え戦となる16位でシーズンを終える可能性があるクラブで考えると、現在14位以下のアウグスブルク、シャルケ、シュツットガルト、ニュルンベルク、ハノーファーの6クラブが該当する。このうち5クラブがシーズン途中で監督を解任しており、良い変化が生まれたところもあれば、さらに落ち込んでしまっているクラブもある。

 現在最下位に沈んでいる原口元気、浅野拓磨所属のハノーファーは、かなり厳しい。

 16位シュツットガルトとの勝ち点差は6。ここ数試合は粘りある戦いこそできているが、全体的なゴールチャンスが少ない。トーマス・ドル監督就任後もわずか1勝のみで、直近9試合で勝ちがない。

 もちろん可能性がないわけではない。残り4試合の対戦カードで"強豪"は次節のバイエルン戦のみ。あとはマインツ、フライブルク、デュッセルドルフと中位のクラブが相手だ。ただ、ここまでも「決定戦」として臨んだシャルケやアウグスブルク、シュツットガルトとの残留争いを落としている。第30節で対戦したヘルタは直近5連敗中と調子を落としていたが、0-0のスコアレスドローに終わった。

 状況が厳しいのは、17位ニュルンベルクも同じだ。ただ、少なくともチームとしてやるべきことには取り組めている。第27節アウグスブルク戦で勝利できたことが大きい。

 その後の2試合は連続引き分けと、勝ち点を積み重ねることができた。前々節シャルケ戦ではほとんどの時間で主導権を握り、久保裕也のゴールで先制に成功。内容も悪くなかった。それだけに一瞬の隙を突かれてセットプレーから同点に持ち込まれてしまったのが悔やまれる。

 鍵を握るのは、マテウス・ペレイラ。攻撃陣では単独で局面を打開できる唯一の存在だ。また、ようやく初ゴールを決めた久保にはここからの得点量産を期待したい。

 16位のシュツットガルトは下降線をたどっている。第24節にライバルのハノーファーに5ー1と快勝した時には、ここから調子が上向くと思われたが、その後は5試合勝ちなし。前々節レバークーゼン戦では試合終了間際にMFサンティアゴ・アスカンシバルが、相手MFカイ・ハベルツに唾を吐きかけて一発レッドカード。ほかにも不用意なファールやミスで自分たちの首を絞めてしまう試合が多すぎる。

 17位ニュルンベルクとの勝ち点差はわずかに3。両チームの勢いを比較すると、立場が逆転してしまう可能性は十分にある。

 シュツットガルトに勝点10ポイント差をつけている14位のアウグスブルクは、よほどのことがない限り残留は大丈夫という見方が一般的だ。

 アウグスブルクは、監督交代の効果が出た。マーティン・シュミット新監督の初戦となった、長谷部誠擁するフランクフルト戦に3-1で勝利。結果以上に、攻撃的な戦い方が印象的だった。前線から積極的にプレスをかけ、ボールを奪うとどんどん仕掛けていく。

 これまでは守備を固めてカウンターという戦い方だったが、シュミット監督は選手に「勇気を持って戦おう」というメッセージを打ち出し、選手から吹っ切れたマインドを引き出した。先週末のシュツットガルト戦も6点奪取で大勝し、ここからさらに勝ち出す可能性は十分にある。

 一方で、15位のシャルケは内容が相当悪い。"入れ替え戦"ポジションのシュツットガルトとは6ポイント差だが、安心できる状態ではない。ニュルンベルク戦こそセットプレーからの1点でなんとか勝ち点1を獲得したが、今節のホッフェンハイム戦は2-5で敗北。調子が上向く気配も感じさせない。

 それに、残留争いを経験したことがある選手が多くない。求められているのは見栄えの良いプレーではなく、ギリギリまで体を張って戦い抜く姿勢のはず。暫定監督フーブ・シュテフェンスが、どこまで選手の意識を「残留争いモード」へシフトできるかが大きなポイントとなるだろう。

文:中野 吉之伴

【著者プロフィール】
なかの・きちのすけ/1977年7月27日生まれ。秋田県出身。武蔵大学人文学部欧米文化学科卒業後、育成層指導のエキスパートになるためにドイツへ。2009年7月にドイツ・サッカー協会公認A級ライセンス獲得(UEFA−Aレベル)。SCフライブルクU-15チームで研修を積み、2018-19シーズンからは元ブンデスリーガクラブのフライブルガーFCでU16監督を務める。「世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書」(カンゼン)、「ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする」(ナツメ社)執筆。オフシーズンには一時帰国して「グラスルーツ指導者育成」「保護者や子供のサッカーとの向き合い方」「地域での相互ネットワーク構築」をテーマに、実際に現地に足を運んで様々な活動をしている
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