【日本代表】アギーレ流4-3-3を読み解く ポイントは「誰が」「どこで」「誰と」プレーするか――

2014年10月07日 飯尾篤史

「マグネット式」では語れない。

初陣のウルグアイ戦で特徴的だったのが、インサイドハーフにこの細貝を起用した采配。カウンターをケアする手堅い戦い方を見せた。 (C) SOCCER DIGEST

 4-3-3は攻撃的なシステムで、アンカーの役割はこう、インサイドハーフの役割はこう――。そのように画一的に、選手の性質や能力を考えないでシステムを語ることを、ホワイトボードに貼られたマグネットに喩えて「マグネット式布陣論」と切り捨てたのは川崎フロンターレの風間八宏監督だったが、ハビエル・アギーレ監督が作ろうとしているのも、まさに「マグネット式」では語れないチームだ。
 
「誰が」「どこで」「誰と」プレーするのか――。それによって、"チームの表情"がガラリと変わるからだ。
 
 アギーレ監督の初陣となった9月5日のウルグアイ戦。中盤の選手起用は、これまでの常識に照らし合わせると、ちょっと考えにくいものだった。
 
 指揮官が採用したシステムは、宣言していたとおりの4-3-3。中盤の底、いわゆるアンカーのポジションに、普段はセンターバック(CB)でプレーする森重真人を起用し、インサイドハーフには田中順也と細貝萌を並べた。
 
 森重をアンカーで起用してきたのは意外だったが、CBをボランチで起用したり、ボランチをCBにコンバートしたりするのは珍しいことではない。しかも、森重はもともとボランチだから、意表を突かれたというほどではなかった。
 
 むしろ驚かされたのは、インサイドハーフの人選だ。田中は前線や1.5列目でプレーするアタッカーで、細貝はどちらかと言えば守備専任のボランチ。つまり、アルベルト・ザッケローニ前体制での遠藤保仁のようなプレーメーカーが、ひとりも起用されていなかったのだ。
 
 ショートパスで攻撃を組み立ててコンビネーションで崩していくのは、日本代表の強みのひとつ。それには攻撃にリズムを生み出すプレーメーカーの存在が生命線になる。ハンス・オフト時代のラモス瑠偉に始まり、澤登正朗、名波浩、小野伸二、中村俊輔、中村憲剛、遠藤といった選手たちが、これまでその役割を担ってきた。ところが、ウルグアイ戦では、彼らのような存在がいなかった。
 
 案の定と言うべきか、ウルグアイ戦ではディフェンスラインからロングボールを放り込み、シンプルにクロスを入れる攻撃が多く、"日本らしい"中盤でのパスワークは見られなかった。アギーレ監督が目指すのは、面白みには欠けるものの、リスクを冒さない手堅いサッカー――。このときはそう解釈した。
 
 ところが、3日後のベネズエラ戦では、プレーメーカータイプの柴崎岳――いまやその枠に収まらない活躍を見せているが――が起用され、チーム全体としてもパスを繋いでコンビネーションから崩していこうとする狙いがうかがえた。
 
 ベネズエラのプレスが予想以上に厳しかったため、後半はロングボールと速攻の回数が増したが、終盤には細貝を下げて田中を投入。インサイドハーフに田中と柴崎を並べて、攻撃姿勢を強めていった。この試合でチームが見せたのは、3日前とは大きく異なる姿だった。

次ページ二段構えでチームの表情を一変させた。

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