ドルトムントがアリアンツ・アレーナにのみ込まれた夜、コバチとファーブルに何が起こったのか?【現地発】

2019年04月12日 中野吉之伴

対照的なアプローチで臨んだ両指揮官

明暗がくっきり分かれただけでなく、リーグの順位も逆転に成功したバイエルンのコバチ(左)。敗れたドルトムントのファーブル(右)にも優勝の可能性はまだ残されているが…。 (C) Getty Images

 先週末の一戦で、ブンデスリーガ2位バイエルンが首位ドルトムントをホームに迎えた一戦は予想以上の大差で決着がついた。

 試合開始早々からバイエルンが主導権を握り、ドルトムントに反撃の余地を与えないまま5ゴールを奪い快勝。正攻法ですべてがうまくいったバイエルンと、奇策に出てすべてがうまくいかなかったドルトムント。

 この対照的なアプローチが生まれた理由を、両監督の采配から試合を振り返ってみる。

 まず、ホームのバイエルンだ。ニコ・コバチ監督は非常に論理的なスタメンを選んできた。各ポジションに求められる条件を備えた選手をそれぞれに配置。GKマヌエル・ノイアー、左SBのダビド・アラバが負傷から復帰し、守備の不安を解消するためアンカーのポジションにハビ・マルティネス、そして両インサイドハーフにトーマス・ミュラーとチアゴ・アルカンタラを置いた。

 この大事な試合で、ミュラーを起用してきたことは興味深いチョイスだった。試合前にコバチは、重要な試合におけるベテランの存在価値について「彼らはチームから不安を取り除き、コントロールすることができる」と口にしていた。

 一方、リュシアン・ファーブル監督は、従来とは戦い方を変えて臨んだ。負傷者を多数抱えていたため、そうするしかなかったとも理解できる。エースFWパコ・アルカセルが欠場し、ドイツメディアの多くは代案としてマリオ・ゲッツェを1トップの位置に起用すると予想していた。だが、ファ―ブル監督はゲッツェをベンチに置き、マルコ・ロイスをトップの位置に上げた。

 そして両翼にはヤコブ・ブルーン・ラーセンとジェイドン・サンチョというスピードに秀でた選手を置いた。ダブルボランチとマフムード・ダフートで中盤の守備をコントロールし、バイエルンの弱点であるDFラインの背後へ素早い攻撃を仕掛けるのが狙いだと見て取れた。

 ファーブルは試合前に「パーフェクトな試合をしなければならない」と語っていた。この戦法は、対バイエルンを想定した相手の弱点からの逆算だ。だが、優勝の行方を大きく左右する一戦で普段とは異なる戦い方を完遂するためには、よほどの精度と成熟さが必要になる。

 狙い通りパーフェクトに対処することができれば、ミュンヘンでのアウェー戦でも勝ち点を持ち帰るチャンスはあっただろう。だがパーフェクトな試合展開はいつもできるわけではない。だからこそ、自己修正能力が問われるわけだが、残念ながらこの日のドルトムントにその力はなかったようだ。

次ページファーブルはもう少し早く手を打てなかっただろうか。

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