「ポケット」で水を得た香川真司の収穫と課題

2014年10月02日 田嶋コウスケ

「ボールを受けた時に視界がよく開けていた」

チーム2点目を決めたラモス(手前)を祝福する香川。スペースを享受して輝きを放った。 (C) Getty Images

 スペースを与えると、香川真司はより一層危険な存在となる。それを改めて証明するような一戦だった。
 
 チャンピオンズ・リーグ(CL)のグループステージ2節、アンデルレヒト戦。4-2-3-1のトップ下で先発した香川は、ドルトムント復帰後初となるCLでフル出場を果たし、全3得点に絡む活躍で3-0の勝利に貢献した。先制点をアシストし、2つの追加点の起点となった。
 
 試合は、高い位置でのプレッシングを持ち味とするドルトムントが押しこむ形で始まった。ホームのアンデルレヒトはアグレッシブに前方へ仕掛ける姿勢を見せつつも、ディフェンス時は自陣で守備ブロックを構築。若手主体のベルギーの名門は、この上下動を繰り返すことで攻守に厚みを持たせようとした。しかし結果として、この策によってドルトムント、そして香川の餌食になった。
 
 ドルトムントが突いたのは、アンデルレヒトが前掛かりになったそのタイミングだ。守備から攻撃への切り替えの瞬間を狙ったのだ。得意のハイプレスでアンデルレヒトの攻撃を高い位置で封じ、前傾姿勢になった相手にいわばカウンターパンチを浴びせる。その中心にいたのが、香川にほかならない。
 
 象徴的だったのが、3分の先制点の場面。中盤でボールを奪うと、押し上げたアンデルレヒトのMFとDFの間にできたスペース、すなわち「ポケット」で香川が受け、浮き球のスルーパスを出す。DFラインの背後に抜け出したFWチーロ・インモービレが、鮮やかに先制ゴールを決めた。
 
「シュートを打とうと思ったんですけど、チーロが見えて。一瞬の閃きというか、うまくパスを出せたなと思います」
 
 香川は先制点の場面を振り返りながら、こうも語っている。
 
「今日はちょっと余裕があったというか、ボールを受けた時に視界がよく開けていた。ボールの回りが良かったので、すごく手応えを感じていました」
 
 香川に「余裕があった」のは、このポケットでフリーになるシーンが多かったからだろう。アンデルレヒトは、序盤こそ守備的MFスティーブン・デフールがマンマーク気味に香川をケアしていたが、そうした対応も次第に散漫になっていった。チームとしてもボールへの寄せが甘く、香川には十分な時間とスペースが与えられた。こうなると、輝きは増す。
 
 10分にもポケットに滑り込んだ香川が、バイタルエリアからケビン・グロスクロイツにスルーパスを送ってチャンスメイク。50分にはペナルティーエリア手前からピエール=エメリク・オーバメヤンにラストパスを通して決定機を作った。いずれも、敵の寄せがほとんどない状態でパスを出している。
 
「僕たちが主導権をうまく握りながら進められたゲームだった。前半の早い段階でゴールできたので、チームとして落ち着いて試合を運べたかなと。アウェーでの先制点は、選手に大きな自信を与えてくれるので、そこが一番よかったと思います」
 
 ドルトムントの2点目は、香川が右サイドに展開したパスが起点になった。3点目も、カウンターから針に糸を通すようなスルーパスをオーバメヤンに通して生まれた。

次ページ「ドルトムント」仕様に身体を仕上げること。

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事