【小宮良之の日本サッカー兵法書】「ガバナンスの欠如」がもたらした欧州王者マドリーの崩壊

2019年04月04日 小宮良之

サポーターの9割以上がベイルを「不要」

ソラーリ監督(奥)のベイル(手前)の起用法は「ガバナンス」という点でも不可解だった。(C)Getty Images

 チームマネジメントは簡単ではない。

 チャンピオンズ・リーグ(CL)で3連覇を成し遂げた王者レアル・マドリーでさえ、内部の軋轢が露出する形で、一つの時代の終焉を迎えている。

 今年3月のレバンテ戦で、ガレス・ベイルがPKで得点を決めた後、祝福に来たチームメイトのルーカス・バスケスの手を邪険に振り払った。近寄りがたい雰囲気。ルカ・モドリッチも怪訝な様子で肩を竦めるしかなかった。

 この行動の理由を、ベイル本人は明かしていない。しかし、チーム分裂の象徴だったと解釈できるだろう。

 サンティアゴ・ソラーリ監督はすでにイスコと衝突。チームの周辺は騒がしかった。マルセロ、カゼミーロらブラジル人選手のモチベーションも明らかに低下。セルヒオ・ラモス、トニ・クロースのコンディションも上がらなかった。その中で、ベイルはサブに甘んじ、鬱憤が出たのだろう。

 すなわち、「ガバナンスの欠如」だった。

 ソラーリ監督は、ベイルが不可解な行動をしたレバンテ戦の翌節、クラシコで先発起用に踏み切っている。それは、発奮させるような狙いがあったのかもしれない。しかし結果は大敗に終わり、ベイル本人のプレーも低調だった。

 これで、チームの亀裂は決定的なものになっている。

「あからさまな反逆行為は許されるのか?」

 当然のように、不満は鬱積する。人間は業が深い。不当性は、チームにとって最悪の毒となる。

 ベイルは交代を命じられ、一度はベンチに座った。しかし、すぐにロッカールームに引っ込み、そのまま帰宅の途についた。傍若無人な振る舞いと言えるだろう。
 
「ベイルは来シーズンのマドリーに必要か、不要か」

『MARCA』紙がWeb上で行なったアンケートでは、9割以上のマドリディスタ(マドリーファン)が、「不要」と答えている。

 その3日後、マドリーはCLのラウンド・オブ16、アヤックスとの第2レグを戦い、ホームであったにもかかわらず、1-4と無残に敗れた。第1レグで2-1と辛勝したにもかかわらず、アウェーゴールのアドバンテージを保てなかった。選手は、戦いに集中できる状態ではなかったのである。

次ページジダンはこの状況を予期していた――。

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