【U-21日本代表】アジア大会総括|隣国のライバルが浮き彫りにした若き日本代表の現実

2014年10月01日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

8強止まりも、攻守両面でポジティブな部分を見出すことは可能だ。

敗れたイラク戦ではチャンスがなかったわけではない。勝負どころで決めきる力をつけたい。(C) SOCCER DIGEST

『苦手とするイラクにまたしても勝てなかった』――この世代は2年前のU-19アジア選手権準々決勝でイラクに敗れ、U-20ワールドカップ出場権を逃している。さらに今年1月のU-22アジア選手権でもベスト8で当たり、0-1と敗れている。そして今大会ではグループリーグの第2戦で対戦し、1-3と力負けした。
 
『ベスト4の壁をまたしても破れなかった』――上記のとおり、「アジア4強入り」のチャレンジに過去、二度失敗しているが、今回も準々決勝で開催国の韓国の前に屈した。目標とするリオデジャネイロ五輪のアジア枠はおそらく「3.5」。現状の「8強止まり」では五輪への切符を手にすることはできない。
 
 この二点を考えただけでも、悲観的にならざるを得ないのが正直なところだ。
 
 たしかに、クウェートやネパール、パレスチナを相手に多彩な形から多くのゴールを奪取した。イラク戦で挙げた唯一のゴールも、岩波拓也の縦パスを矢島慎也がフリックで流したのを起点に、鈴木武蔵がおとりとなって中島翔哉が抜け出し、GKとの1対1を制すという、流れるようなコンビネーションプレーでネットを揺らした。また4-3-3を軸に、5-4-1や4-2-3-1など複数のシステムを巧みに使い分けるなど、展開に応じた柔軟性のある戦いもできた。0-1で敗れた韓国戦でも、失点はPKによるもので流れの中で崩されてゴールを奪われてはおらず、しぶとく、粘り強い戦いを披露したとも言える。
 
 ポジティブな面を見出すことは可能だ。成長がなかったわけではない。むしろ、攻撃面でも守備面でも、1月のU-22アジア選手権に比べれば、格段に進歩していると言っていい。遠藤航のアンカー起用、複数人が絡んだ縦に速い連動性ある崩し、手倉森誠監督が言う「泥臭く守る覚悟」を体現した守備など、今後チーム強化を進めるうえでの軸となるポイントで、期待が持てる成果を出せたのは間違いない。
 
 個々が感じた悔しさはさらなる成長の発奮材料になる。ラインコントロールの再整備、カウンター攻撃のブラッシュアップなど、実戦を通じて改めて表面化した課題に気づけたのも、完全アウェーの韓国戦という貴重な経験とともに、大きな財産となるだろう。開催国との対戦を前に、緊張よりも「楽しみ」と言う選手が少なくなかったのも、頼もしさを感じさせた。

次ページ僅差の勝負だったが、韓国戦は完敗だった。

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