微妙だったエムバペとグリエーズマンの関係も問題なし! W杯時より“華麗”な世界王者フランスの現在地 【現地発】

2019年03月28日 結城麻里

王者の風格を漂わせたフランス代表。

ポグバ(2列目左)を中心に、若くして経験豊富なタレント陣を擁する今のフランス代表に、穴は見られない。 (C) Getty Images

 スタッド・ド・フランスの時計は、3月26日の零時を指そうとしていた。

 アイスランドとのEURO2020予選が行なわれたこの日、代表通算得点数を「35」としたオリビエ・ジルーがミックスゾーンで微笑みながら、「あの(ダビド・)トレゼゲを抜いたなんて嬉しいよ。(ミシェル・)プラティニ? 僕のなかで次の目標はプラティニだ」と、記者たちと談笑をしていた。

 そのとき、先に取材対応を終えていたアントワーヌ・グリエーズマンが、背後からジルーの後頭部でパチンッと指を弾いて去って行った。このやり取りに、記者たちも笑っていた。

 この穏やかな光景こそが、今のフランス代表の現状をよく表わしている。

 フランスはEURO2020予選2試合を終えて、計8得点と好スタートを切った。そこに見えたのは、規律と華麗さと団結心である。モルドバ(4-1)とアイスランド(4-0)という格下が相手とはいえ、美学に欠けると批判されたロシア・ワールドカップ以上の内容で、文字通り「王者の風格」を漂わせたのだ。

 何よりも魅惑的だったのは、攻撃性能の向上だ。昨夏のワールドカップ前後のフランスは、引いて守りを固める相手になると苦戦した。ところが、この3月の代表シリーズでは、いずれも徹底的に守備ブロックを固められたにもかかわらず、ロシアで見せた強みを壊さないまま、多彩な攻撃で大量得点を実現させた。

 22日のモルドバ戦は、全てが完璧なコンビネーションからゴールが生まれた。

 先制点は、ポール・ポグバが放った相手DFラインの裏への華麗なパスを、グリエーズマンが見事なシュートで決めた。

 その次は、グリエーズマンの正確なCKをラファエル・ヴァランヌがヘッドで突き刺し、3点目はブレーズ・マテュイディのパスをジルーが左足でゲット。トドメはトマ・レマールのパスにキリアン・エムバペが走り込んで、相手GKとの1対1を難なく制した。

 続くアイスランド戦(25日)も、「レ・ブルー(フランス代表の愛称)」は華麗だった。

 まず、エムバペのクロスをサミュエル・ウンティティがヘッドで仕留め、次いでバンジャマン・パバールのクロスを、ジルーが内太腿で泥臭く押し込んだ。3点目は、ポグバ→グリエーズマン→エムバペの華麗な連動。そして、最後もポグバ→エムバペ→グリエーズマンのコンビネーションから生まれた。

 DF陣(ヴァランヌ、ウンティティ)がセットプレーから決め、グリエーズマンがピッチを縦横無尽に走り回ってリズムをつける姿は、ワールドカップと酷似する。

 だが、ポグバがクオリティーを高め、ロシアでは無得点ながら縁の下の力持ちに徹したジルーがゴールに寄与し、エムバペとグリエーズマンが互いにアシストし合う姿を見るに、攻撃力はより一層に進化したと言える。

次ページエムバペの関係性を問われたグリエーズマンは笑いながら…。

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