大型補強も結構だが…過渡期を迎えた王者バイエルンが、未来に向けて今こそ着手すべきこと 【現地発】

2019年03月22日 中野吉之伴

有望株を育てられずに放出した歴史…

国内の出来上がった才能を引き抜いたり、海外クラブの“余剰人員”をうまく活かしたりする他、原石を磨いて自チームで完成形とするのもバイエルンのやり方である。クラブの出自を考えれば、この伝統的な手法は今後も引き継がれていくべきだろう。写真は右からレバンドフスキ、ボアテング、ハメス、ニャブリ。 (C) Getty Images

 主力メンバーの高年齢化を懸念していたバイエルンのウリ・ヘーネス会長は、2017年8月に育成アカデミーを完成させた際、「育成はバイエルンの将来への大事なベースとなる。我々としては、移籍金高騰化が日常化しつつある今の流れに対するアンチテーゼ、我々の答として、育成へ投資していくつもりだ」と明言していた。

 だが、一方でバイエルンには、ドイツ・サッカーの盟主という立ち位置がある。タイトル獲得、チャンピオンズ・リーグ(CL)で上位進出という「ノルマ」を果たしながら、という条件が常について回る。

 若手の成長を、じっと待てるわけではない。結果として、すでにある程度以上のレベルで、ある程度以上の実力を披露している比較的若い選手を市場で探し、獲得していくというのが、バイエルンの補強策の常だった。

 ところが先日、ヘーネス会長は来シーズンに向け、「大型補強を考えている」と語った。ただ若いだけではなく、すでにワールドワイドで認められている実力者を獲得しようとしているのだ。

『Bild』紙は、すでに獲得済みのフランス代表DFバンジャマン・パバール(シュツットガルト)の他、同代表DFのリュカ・エルナンデス(アトレティコ・マドリー)、コートジボワール代表右アタッカーのニコラ・ペペ(リール)、そしてイングランド代表の新鋭FW、カラム・ハドソン=オドイ(チェルシー)を獲得しようと動いていると報じていた。

 また、ドイツ代表のティモ・ヴェルナー(RBライプツィヒ)、ユリアン・ブラント、カイ・ハベルツ(ともにレバークーゼン)も候補リストに入れているようだ。

 こうした動きが、どこまで実現して、どこまで機能するようになるかは、現時点では分からない。うまくいけば素晴らしいが、いつも補強がうまく保証はない。

 だからこそ、クラブにとってこうした補強策と並んで、あるいはそれ以上に重要なのが、「今すぐ活躍できるわけではないが、将来は間違いなく有望株」となる選手を、どのように成長させるかの明確な発展プランを作り上げることだ。

 バイエルンはこれまでに、有望とされる選手を獲得しながら、育てることができず、またサポートをすることができずに、早々に放出したケースが少なくない。

 ジョゼップ・グアルディオラが監督をしていた頃にプレーしていた、ジャンルカ・ガウディーノという選手を覚えているだろうか。2014-15シーズンには、ヴォルフスブルクとの開幕戦で起用され、「将来のレギュラー候補」と持ち上げられたが、その後は出場機会がほとんど与えられることはなく、現在はスイスのヤングボーイズでプレーしている。

 あるいは、シナン・クルト。「ドイツ・サッカー最大のタレントのひとり」と呼ばれた時もあったが、鳴かず飛ばずのまま、クラブを去った(現在はヘルタ・ベルリン所属)。

 彼らの他にも、ホセ・ソサ、ヤン・シュラウドラフ、マルセル・ヤンセン、アレクサンダー・バウムヨハン、セバスティアン・ロデ、ニルス・ペーターゼン、ブレーノ等々……レンタルで獲得した宇佐美貴史もそうだろうか。数え上げればきりがない。

 どの選手も放出時、獲得時よりも値段が下がってしまっていた。

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