【大分】3402日ぶりのJ1でのホーム勝利は白星以上の何かをもたらした

2019年03月18日 柚野真也

11人全員による「狙いを合わせた」サッカーをした

55分の先制点は、ティティパンから松本、そして藤本へ。59分の2点目の場面は松本、岩田とつなぎ藤本へ。大分は1対1ではなく、複数人の連動性によって攻守の機能性を高め、勝利を掴んだ。写真=金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

[J1リーグ4節]大分2-0横浜/3月17日/昭和電ド

 横浜戦の勝利は格別だったーー。大分トリニータにとってJ1でのホーム勝利は2009年の32節・川崎戦(1-0)以来となる。実に3402日ぶりだ。

 その川崎戦だがトリニータ史上最高のコレクティブで芸術的なサッカーに痺れた試合だったと記憶する。ポポヴィッチ監督の下、ポゼッションで圧倒し、多彩な攻撃で相手を翻弄した。2009年は30節にJ2降格が決まり、同時に深刻な経営難が露わになり、クラブの存続自体が危ぶまれた。そんな暗黒の1年だったこともあり、あの試合は特別に光り輝いた記憶となっていたのかもしれない。

 今季の大分は"あの試合"の記憶を上書きしてくれそうな試合を継続している。片野坂知宏監督がJ3時代から積み上げたサッカーがJ1でも通用しているというのは早計だが、意図ある攻撃と守備をピッチで表現できていることは確かだ。片野坂監督の言葉を借りるなら、11人の選手が「狙いを合わせて」サッカーをしている―ーということになる。
 
 GKからボールを動かし、相手の変化を見て、サイドを起点に攻撃する形はもはや不変のスタイルだ。ポジションを取り直し続け、ボールをつなぎ、相手ゴールに運ぶ。各選手が「ここに動けばこうなる」という予測を怠らない。決してパスをつなぐことに固執するのではなく、相手を自分たちの陣内におびき寄せてから、そこからカウンターを仕掛ける手法もまた、主導権の握り方のひとつとしている。
 
 全体の動きは一見複雑に映るが、実はサッカーの基本に忠実だ。パスを出したら止まらず、リターンをもらいにいく。あるいは2本、3本先のパスを受けるために動き出す。ポイントはパスを受ける位置取りだ。相手と相手の間を狙いマークをキレイに外していき、最終的にフリーで軽くゴールに押し込める状態をつくる。横浜戦の2点目はまさにそれ。複数の選手が絡み、複数のパスがつながりネットを揺らした。
 

次ページ突出した「個」よりも、「組織力」で勝ちにいく姿勢

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事