エムボマ、アラウージョを超えてゆけ! 絶好調のアデミウソン、その美しき技巧と献身

2019年03月18日 川原崇(サッカーダイジェストWeb編集部)

誰もが囁く。「今年のアデはヤバイ」と

そのドリブルは速さ、巧さ、強さの三拍子が揃う。絞り込んだ肉体によって、破壊力はさらに増した。写真:早草紀子

[J1リーグ第4節]川崎 0-1 G大阪/3月17日/等々力

 パトリック・エムボマ、アラウージョ、マグノ・アウベス、ルーカス、そしてレアンドロ。ガンバ大阪の前線を牽引してきた伝説の助っ人ストライカーたちだ。彼らが繋いだ栄光の9番を背負って今季で4年目。ブラジル人FWアデミウソンが、出色のパフォーマンスを続けている。

 もともとポテンシャルは折り紙付きだ。ジュニア時代から名門サンパウロで英才教育を施され、年代別のブラジル代表にも常に名を連ねるなど、将来を嘱望された。2015年2月に横浜F・マリノスにレンタル移籍した際はまだ21歳。近未来のセレソン候補が入団したとあって、大きな注目を集めたものだ。

 しかしながら、日本では鳴かず飛ばずの日々が続いた。

 横浜を1年で退団し、ガンバに活躍の場を移す。圧倒的な技巧を誇りながらも組織のなかでいまひとつ連動できず、随所できらりと光るものは見せるが、どこか継続性に乏しい。やがてハムストリングなど大小の怪我に悩まされるようになっていく。2018年4月にはふたたび離脱し、ブラジルに一時帰国。「もうこのまま契約解除か」「退団必至」とも囁かれた。

 ブラジルでおよそ1か月を過ごしたのち、再合流して懸命のリハビリに取り組む。ちょうど宮本恒靖・新政権が発足したタイミングで、本人も心機一転、巻き返しに躍起だった。夏以降は先発出場を繰り返しながら少しずつ試合勘を取り戻していくのだが、次第にベンチスタートが増え、ファン・ウィジョと新加入の渡邊千真が幅を利かす前線で3番手の扱いとなってしまう。ニーズを満たしていなかったのは、指揮官が求めるチェイシングとハードワーク、その質と量の両方だ。

 
 チームはシーズン後半戦の快進撃でJ1残留を果たした。アデミウソンも印象的なゴールをいくつか決めるなどまずまずの存在は示したものの、本人にしてみれば不完全燃焼に終わった感は否めないだろう。大反攻作戦は、ここから始まったのだ。

 年明けのチーム始動前から、実しやかにクラブ関係者や取材陣から聞こえてきたのが「今年のアデはヤバイ」だった。自身にハードな自主トレを課してきたのだろう。明らかに体重を落として絞り込んできた。一方で首回りは屈強で、ヒップラインはグイっと盛り上がっていて、腕も脚もムキムキである。

 自分にはなにが求められているのか、なにが足りないのか。クラッキが導き出した答だった。

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