【J2】紙一重の「マラソンレース」 昇格プレーオフ圏内に生き残るのは――

2014年09月23日 熊崎敬

17位の水戸まで少なからずチャンスがある空前の大混戦。

驚異的な巻き返しでプレーオフ圏内を狙う横浜FC。33節大分戦はロスタイムに追いつかれる痛恨のドローだったが、6位のその大分とは勝点5差だ。(写真は30節草津戦) (C) Getty Images

 湘南ベルマーレが1年でのJ1復帰を決めた。
 9試合を残しての昇格決定は史上最速。ガンバ大阪や川崎フロンターレ、サンフレッチェ広島といった強豪ではなく、親会社を持たない小規模クラブが記録を樹立したことに意味がある。
 
 お金がなくても、大志を抱いて邁進すれば素晴らしいプレーができる――。
 この湘南の快挙は、多くの中小クラブのモデルとなるはずだ。
 湘南は過去二度、J1に昇格しているが、どちらも1年でのJ2降格の憂き目を見た。来季は「クラブ史上初の残留」が現実的な目標となるだろう。
 
 全42節で行なわれるJ2は、さながらマラソンのよう。レースは残り10試合を切ったが、3位から6位のプレーオフ争いはまったく予断を許さない。
 
 この33節では、上位陣が軒並み勝点を落とした。
 首位の湘南と2位の松本山雅が引き分け、3位のジュビロ磐田、4位のファジアーノ岡山が完敗。5位のギラヴァンツ北九州と6位の大分トリニータも引き分け。中位グループを引き離すことができなかった。
 残り9試合、6位の大分を勝点10差で追う17位の水戸まで少なからずチャンスはある。プレーオフ争いは史上空前の大混戦といっていい。
 
 この節、ぼくは横浜FCと大分の一戦を観戦した。
 横浜は、後半戦でいちばん勢いのあるチームだ。前半戦は19位と低迷したが、18節からの14試合連続無敗もあって後半戦最多の勝点を稼いでいる。彼らは2年前、後半戦に急浮上してプレーオフ圏内の4位に滑り込んだが、その再現も現実味を帯び始めた。山口素弘監督が志向するつなぐスタイルが浸透するにつれ、順位を上げてきている。
 
 もっとも、この大分戦はオウンゴールで1点を先制しながら、ロスタイムに手痛い同点弾を浴び、「直接対決」の大分を引きずり下ろすことはできなかった。
 終盤、大分に押し込まれた横浜は、コーナーキックのクリアを敵に渡してしまい、クロスを若狭大志に頭で突き刺された。その瞬間、大分イレブンは優勝したかのように飛び跳ね、一気に走り出す。1点の重みをまざまざと物語る光景だった。
 
「勝点3にこだわり、勝負にこだわっていこうと伝えていたんですが、甘いですね。甘い甘い。勝点3をみすみす逃したようなゲーム」
 試合後、横浜の山口監督は「甘い」と繰り返した。今夜は、なかなか眠れないだろう。
 
 今節はタイムアップ直前にスコアが動く試合が多かったが、これが終盤戦の難しさかもしれない。我々記者はついつい「集中していないからだ」と書いてしまうが、これは後出しジャンケンのようなもの。集中していても、決められるときはある。
 MF松下年宏が語ったように「終わったことを悔やんでも戻ってこない。次の試合に集中するだけ」だ。
 
 紙一重の戦いが延々と続くJ2。残り9試合、どこが6位以内に生き残るだろうか。
 
取材・文:熊崎敬
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