目指すはJリーグ! リアル「南葛SC」の現状と代表・高橋陽一氏のチーム愛に迫る

2019年03月20日 長沼敏行(サッカーダイジェストWeb編集部)

「漫画とは違って思った通りにはいかない(笑)。それも面白さ」

『キャプテン翼』の原作者、高橋陽一氏が株式会社南葛SCの代表取締役を務める。今季から新たな運営体制となった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 舞台は東京都1部リーグである。国内最高峰のJ1リーグから数えれば、実質「J7」。このカテゴリーに、漫画『キャプテン翼』の主人公、大空翼が所属するクラブと同名のクラブチームがある。ご存知、「南葛SC」だ。

 漫画原作者の高橋陽一氏の地元、東京・葛飾区で活動していた「葛飾ヴィトアード」を母体に、6年前の2013年に「南葛SC」に改名。今年に入り、クラブに後援会会長として携わっていた高橋氏を代表取締役とするトップチームの運営体制が整った。

 チームは昨年、元日本代表MFでワールドカップ出場の経験もある福西崇史氏を選手として招聘。今季からは監督として采配を振るうことに。さらには、やはり元日本代表MFであり鹿島などで活躍した青木剛を補強するなど、今冬のストーブリーグでも話題を振りまいてきた。

 着々と強化を進める南葛SCだが、「チーム名」の生みの親であり代表である高橋氏は、クラブにいかなる想いを持って関わってきたのか。そして、南葛SCを今後どう導いていこうとしているのか。ご本人に直接話を伺った。

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「まあ足踏みした年があったりして、順調に上がってきているわけではないんですが、そうしたなかでも成長して強くなっているし、後退はしていない。そこはすごくよかったなあと思います」

「南葛SC」として戦ってきたこの5シーズンを振り返り、高橋氏はホッとしたような笑顔でそう語る。一方で、リアルな勝負の世界の難しさも感じているようだ。
「クラブとして上を目指すのであれば、チームの成長は大事な部分かなと思っていて、その点では順調かなと思うんですが、ただやはり勝負事ですからね。漫画とは違って思った通りにはいかない(笑)。それが現実ですが、まあそれも面白さであり、悔しさでもあり、という感じですね」

 チームが目指すところは、やはりJリーグへの昇格だ。現在、南葛SCが所属する東京都社会人リーグ1部(以下、都リーグ)は16チームが在籍。1回戦総当たりのリーグ戦で3位以内に入れば、関東社会人リーグ2部(以下、関東リーグ)昇格を懸けて、1都7県の1部リーグ戦上位チームによる関東社会人サッカー大会(以下、関東大会)への出場権利を得ることになる。

 昨年は都リーグ1部で優勝し、第1代表として関東大会へ駒を進めたものの、南葛SCは同大会の準々決勝で敗退。関東リーグ2部昇格の道を断たれた(※2チームが昇格)。
「シーズンの終盤になると1敗が命取り。それで終わりというシチュエーションになりますからね。逆にJリーグは何回か負けても優勝できるからいいな、とか思ってしまいます(笑)」

 そう道のりの厳しさを語る高橋氏。同じ東京都所属で、現在は関東リーグ1部に在籍する東京23FCや東京ユナイテッドFCも、元Jリーガーらを補強してJリーグ入りを目指している。こうしたライバルがひしめくなか、南葛SCもここ数シーズン、Jリーグの舞台で活躍してきた選手を迎え入れているが、「逆にそういう選手を入れていかないと勝ち切れない。東京都リーグもけっこう厳しいんですよね」というのが実情のようだ。J7といえども侮れない熾烈な競争があるのだ。
 

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