「チェルシーの女帝」はサッカーの素人…サッリとも関係が悪化

2019年03月06日 ジャンルカ・ディ・マルツィオ

グラノフスカヤはすぐに選手の肩を持つ。

グラノフスカヤ(右)はオーナーのアブラモビッチの腹心のひとりで、石油会社『シブネフチ』で1997年から秘書兼相談役を務め、チェルシーでもディレクターに。ただ、サッカーはいわば素人で、サッリ(左)との関係は……。(C)Getty Images

 今冬の移籍市場でナポリ時代の教え子ゴンサロ・イグアインを手に入れたマウリツィオ・サッリ監督だが、チェルシーでは困難に陥っている。
 
 クラブの実質的な経営責任者であり強化についても最終的な権限を持っているマリーナ・グラノフスカヤ女史との関係が冷え切っており、ほとんどコミュニケーションがなくなっているというのだ。
 
 これは前監督のアントニオ・コンテに聞いた話だが、グラノフスカヤは企業経営に関してはプロかもしれないがサッカーに関してはまったくの素人で、意思決定に関してはオーナーのロマン・アブラモビッチの意向に沿うことしかできないという。
 
 ところがチェルシーには、チームの強化から日々の運営まで、クラブの現場を統括する責任者(スポーツディレクター)が不在で、すべてはグラノフスカヤの承認を得なければ動かない。
 
 そのグラノフスカヤは、監督と選手の間に入るとほぼ常に選手の側に立ち、監督が特定の戦術やトレーニングメニュー、食事法などをチームに課そうとしても、それに不満を持った選手がグラノフスカヤに直訴すると、そちらの意見が通ってしまうのだという。
 
 いまならエデン・アザールやダビド・ルイス、コンテ時代ならジョン・テリーやガリー・ケイヒルがそうだった。ピッチ上の結果が伴っていれば選手も文句は言えないが、結果が出なくなると彼らに口実を与えることになり、ますますチームマネジメントが難しくなっていくというわけだ。
 
 チェルシー関連の話題では、アブラモビッチはクラブの売却を本気で考えており、グラノフスカヤにこれ以上の投資は控えるよう命じているとの話がある。イギリス政府とビザの延長をめぐってトラブルになり、アブラモビッチにとってチェルシーを保有する意味は薄れつつあるという。
 
 とはいえ、この規模のクラブに買い手を見つけるのは簡単ではないのも事実。いまのところ具体的な話が動いているわけではまったくない。
 
文:ジャンルカ・ディ・マルツィオ
翻訳:片野道郎
※ワールドサッカーダイジェスト2019年3月7日号より転載。
 
【著者プロフィール】
Gianluca DI MARZIO(ジャンルカ・ディ・マルツィオ)/1974年3月28日、ナポリ近郊の町に生まれる。パドバ大学在学中の94年に地元のTV局でキャリアをスタートし、2004年から『スカイ・イタリア』に所属する。元プロ監督で現コメンテーターの父ジャンニを通して得た人脈を活かして幅広いネットワークを築き、「移籍マーケットの専門記者」という独自のフィールドを開拓。この分野ではイタリアの第一人者で、2013年1月にジョゼップ・グアルディオラのバイエルン入りをスクープしてからは、他の欧州諸国でも注目を集めている。
 
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