【スペシャル対談】村井満Jリーグチェアマン×セルジオ越後 Jリーグの発展に必要なビジョンとは[前編]

2014年09月17日 週刊サッカーダイジェスト編集部

「W杯を現地で見て世界に比べるとJリーグはスピードが足りないと感じた」(村井チェアマン)

Jリーグの現状と未来について激論を交わした村井チェアマンと越後氏。Jリーグのさらなる発展を願いたい。(C) SOCCER DIGEST

 5代目チェアマンとして精力的に活動する村井満氏と、93年のリーグ創設時から厳しい目で見続けてきたセルジオ越後氏が、Jリーグの現状と未来について激論を交わした。立場の異なるふたりが描く、発展のビジョンとは――。
 
――◆――◆――
 
――今回は「日本サッカー再建論」をテーマに、Jリーグが日本サッカーをいかに盛り上げていくかを、おふたりの視点で語り合っていただければと考えています。まずは村井チェアマン、就任から約7か月が経過しましたが、日本サッカーの現状についてどのように考えていますか?
 
村井 私が就任時にまず思ったのは、Jリーグの平均観客入場者数がなだらかな減少傾向にあって、Jリーグから徐々に人が離れている現状をどうするかでした。新規のファンを十分に獲得できていないなかで、Jリーグをもっと魅力あるものにするにはどうしたらいいか。
 
 そう考えた時に、選手が頑張ってもできないこと、例えば屋根付きのサッカースタジアムの建設を日本中に訴えていくことのほか、サッカーのプロからすれば、リスタートの遅さや選手交代もひとつの駆け引きなのでしょうが、お金を払って観に来られる方はもっとスピード感があって、全力でプレーする姿を見たいはずだと思ったので、「チェアマン3つの約束」のような提言を行なったんです(注/今年2月のキックオフ・カンファレンスで、[1]笛が鳴るまで全力プレー、[2]リスタートを早く行なう、[3]時間稼ぎのような選手交代はしないという3点を各クラブの監督・選手に要望した)。
 
 そうした形でチェアマンとしての業務がスタートしたわけですが、6月にワールドカップを現地で観て日本の敗戦を目の当たりにした時、ただ快適なスタジアムを造りたいとか、全力プレーを見てほしいと言うだけでは、サポーターの方は満足していなくて、日本が本当に強くなるために、Jリーグとして何ができるのかという原点に戻らなくてはダメだと思ったんです。
 
 また、ワールドカップの全64試合のリスタートまでにかかる時間も計測してみたんですが、CKは平均で約26秒でした。Jリーグは約30秒で4秒くらい遅い。ボールを一度セットしてから水を飲み、ストッキングを直して蹴る間に相手は全部戻り切っている。相手が戻り切る前に、休む暇もなく展開していく世界のサッカーに比べると、やはりスピード感が足りないなと具体的なレベルで感じたんです。
 
越後 でも、それは戦術や試合展開にもよりますよね。セットプレーは負けていたら早く蹴るし、勝っていたらわざと遅くする。それは選手の問題ではなく、レフェリーの問題じゃないですか。遅延行為を日本のレフェリーが許すからいけないと、僕は思う。
 
村井 越後さんの言うとおり、選手にリスタートを早くしろと言っても、レフェリーも共同歩調をとらなければ意味がありません。そしてサポーターも、選手がぶつかったくらいでブーイングをしていてもダメだし、倒れても、すぐに立ち上がってプレーする選手に拍手を送るような、そんな環境を作りたいですね。
 
越後 試合をスピーディーにしたいなら、Jリーグとしてルールを少し変えるなどの工夫をしたらどうでしょう。ブラジルでもFKの時に線を引くようになったら、壁が前に出ることがなくなって試合のスピードが上がった。あのスプレー、Jリーグはまだ導入していませんね。
 
村井 我々もバニシングスプレーの導入は急ぎたいのですが、Jリーグはゲームが年間700試合以上あって、常に相当数を用意する供給体制などを今、調べている段階です。様々な制約条件がクリアされれば、来年からでもすぐに導入したいですね。
 
越後 それは予算の問題?
 
村井 いや、お金というより、生産業者が特許を持っていますから、その交渉にも少し時間がかかります。
 
越後 ブラジル・ワールドカップでも使いましたからね。ダメということはないでしょう。
 
村井 そうなんですが、なかなか許諾を得られないのが現状です。ただ、言い訳をするつもりはなく、実際にワールドカップでもスプレーの効果がありましたし、いいものは早く導入しなくてはいけません。

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