「我慢している」。仙台から広島に復帰した野津田岳人が葛藤する理由

2019年03月02日 志水麗鑑(サッカーダイジェスト)

「チームのバランスを見ているのもある」

思うようにプレーできていない現状に、野津田が口を開いた。写真:徳原隆元

[J1リーグ2節]広島0-0磐田/3月1日/Eスタ
 
「我慢することは自分のなかで意識している。まずはチームのやり方に合わせることも大事なのかな」
 
 調子が良い時は流れるように喋ってくれる野津田岳人だが、スコアレスドローに終わった磐田戦の後、取材対応では下を向きながら話していた。
 
 少なからず葛藤はあるだろう。「我慢」の正体を明らかにするべく、かつて仙台担当として野津田のプレーを見てきた視点で、こんな質問を投げかけた。
 
「仙台時代のように、もっと周囲の仲間とポジションを入れ替えながら、自由に動きたいのでは?」
 
 野津田は言葉を紡ぎながら、こう答えた。
 
「あー……、そうですね。もっと、自分がボールを引き出したいです。そこは徐々に出せれば良いかなと思うので、我慢するのも必要なのかなと思います。シャドーで自分がいなかったら受ける人がいないという場面もあります。チームの決まり事でもあるので、後ろでつなげる選手が多いのもありますけど、そういうのも(我慢の)要因かと」
 さらに、「もどかしさはありますか?」と聞けば、「はい…、そうですね」と言う。当然だろう。仙台時代の野津田は、ボランチまで落ちてパスを捌きながら、最前線にスペースを見つければゴール前にも飛び出し、ゲームメイク、時にはフィニッシュまでこなしていた。そして何より、出番を得られずに不遇を味わった16年の新潟、17年夏までの清水時代を経て、生き生きとプレーをしていたのが印象深い。
 
 そんな居心地の良かった東北の地を離れた今季、森﨑浩司が着けた7番を背負って、ユースから育ててくれた広島に復帰した。しかし、まだ地元サポーターに仙台で成長したプレーは見せられていない。
 
 それなら、仙台で培ったプレーを、エゴイスティックにアピールするべきという見方もできるだろう。なぜなら、今季の広島が採用する3-4-2-1のシステムは、シーズンの大半を4-4-2の布陣で戦い続けた昨季の主力より、野津田の方が仙台で豊富に経験しているからだ。
 
 だが、本人はフォア・ザ・チームの精神を貫くようだ。
 
「自分たちが主体となってボールを動かすのであれば、(仙台時代のような)そういう動きも必要だとは思います。もっと流動的な動きを増やせればいいと思いますけど、まずはチームのバランスを見ているのもあるので、そういう部分も我慢としてはあるのかな。もっと結果を出していければそういうやり易さも出てくるのかと」
 
 ユース出身だけに、サポーターの期待も大きいだろう。ただ、本人が言うように、広島での活躍を楽しみにしている人も、今はまだ「我慢」をして見守るべきなのかもしれない。
 
取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)
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