J2から北九州、山形、千葉がベスト8へ!! 天皇杯における「番狂わせ」の理由とその歴史

2014年09月11日 サッカーダイジェストWeb編集部

“格上”チームに心理的な負担がかかるのが番狂わせの原因か。

キャピタルワン・カップ2回戦でマンチェスター・ユナイテッドは、3部リーグのミルトン・キーンズ・ドンズに0-4の完敗。一発勝負のトーナメントでは、どの国でも番狂わせが起こりやすい。 (C) Getty Images

 プロクラブから高校サッカー部まで、あらゆるカテゴリーのチームが出場できる大会、それが天皇杯だ。そして、そこではいくつもの「番狂わせ」というドラマが生まれる。今年の天皇杯は9月10日に4回戦が終わったが、例によって、というより、例年以上に多くの番狂わせが演じられた。
 
 とはいえ、何を持って番狂わせとするかは、人それぞれの主観であるし、その時々のチームの調子やメンバー構成などもあるので、その定義は難しいところではあるが、ここでは下のカテゴリーに属するチームが上のカテゴリーのチームを破ったケースを番狂わせとして、今年ここまでの主な番狂わせを以下に記した。
 
◎2回戦
ベガルタ仙台 1-2 奈良クラブ
鹿島 2(1PK2)2 ソニー仙台
神戸 1-2 関西学院大

◎3回戦
横浜FM 2(延長)3 北九州
新潟 1(延長)2 長崎
柏 1(11PK12)1 千葉
川崎 0-1 愛媛
浦和 1-2 群馬

◎4回戦
山形 1-0 鳥栖
北九州 0(4PK3)0 甲府

 
 J2に属するギラヴァンツ北九州は、3回戦(横浜F・マリノス戦)、4回戦(ヴァンフォーレ甲府戦)と立て続けにJ1チームを撃破してベスト8入り。いずれも粘り強さを前面に押し出しての勝利だった。今季はJ2で4位につけるなど好調ではあるが、先週末にはアビスパ福岡との「福岡ダービー」を3-5で落とし、心身ともにダメージを残していたと思われるなかで、PK戦の末にJ1チームを下すとはたいしたものである。
 
「今季はリーグで5度も逆転勝ちしており、こういう成功体験がチームを強くしている」と柱谷幸一監督は語るが、J1チームを2度下したことは、さらに自信と勇気、そして強さを選手たちに植え付けたのではないだろうか。
 
 一方、J1経験のあるモンテディオ山形はサガン鳥栖を延長戦の末に撃破。こちらは現在、J2で10位と苦しんでいるが、タイトなスケジュールのなかでJ1の上位チームを下したということで、こちらも十分評価に値する。
 
 Jリーグ発足以降、トップカテゴリー以外のチームが天皇杯で優勝を果たしたのは、2011年のFC東京だけだ。決勝に進んだのは、同年のFC東京と京都サンガ(決勝でのJ2対決も史上初にして唯一)、そして94年のセレッソ大阪である。果たして、北九州、山形、そしてV・ファーレン長崎を下して準々決勝へ駒を進めたジェフ千葉のJ2勢は、今後も勝ち進み、歴史に名を残すことができるだろうか。
 
 さて、サッカー観戦をより魅力的にする要素ではあるが、かといって頻発すると興醒めもしてしまう番狂わせ。今年は前記したように、すでにJ1の10チームが下のカテゴリーのチームに足元をすくわれて姿を消した。前年の主な番狂わせといえば、名古屋グランパスがAC長野パルセイロに、浦和が山形に敗れた2試合ぐらいだっただけに、まさに今年は波乱続きと言える。
 
 サッカーは他に比べて番狂わせが起こりやすい競技であり、その要因もさまざまだが、天皇杯で言えば"格上"チームが精神的に追い込まれるケースが非常に多い。言うまでもなく、格上と格下が対戦すれば、リスクが多いのは前者だ。勝って当然、負ければ酷評・嘲笑されるだけでなく、多くのものを失いかねない。一方、格下は何も失うものはなく、むしろ自身の評価を高める絶好の機会であり、精神面では優位に立ちやすい(学生の場合だとプロ相手に気後れすることもあるだろうが)。
 
 またリーグとの兼ね合いでメンバーを入れ替えることで生じるプレーのズレや違和感も、試合が進むにつれて、格上チームの精神状態(ひいてはプレーにも)に悪影響を及ぼすということがあるのだろう。
 
 もっとも、このような事情があったとしても、明らかな実力差があれば勝敗は順当なものに落ち着くはずであるが、そうならないのは、日本サッカーの場合はひとつやふたつのカテゴリーの違いでは、そう大きな実力差がないからだろうか……。
 
 まあ、本場イングランドでも、キャピタルワン・カップ(リーグカップ)やFAカップで毎年、強豪クラブが足元をすくわれているのだから(今回は前者でマンチェスター・ユナイテッドが餌食となった)、サッカーとはそういうものなのかもしれない。そして、それもまた醍醐味のひとつだとも言えるのだろう。

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