イニエスタ関東初登場の裏で繰り広げられた静かに熱いマッチアップ! 湘南躍進の鍵を握った小さなドラマ

2019年01月27日 塚越 始

梅崎司が那須大亮とのマッチアップで再認識したこととは?

イニエスタが関東に初お目見えした昨年8月の湘南対神戸戦。終盤には元浦和の2選手による激しいマッチアップが繰り広げられていた(C) SOCCER DIGEST

 2018年8月19日の湘南ベルマーレ対ヴィッセル神戸戦は、初めて関東地方の公式戦に登場するMFアンドレス・イニエスタが最大の注目を集め、超満員のBMWスタジアム平塚で、その期待に応えるようなパフォーマンスを披露した。

 ホームで1-2と敗れてしまった湘南は神戸の倍以上となるシュート16本(神戸は7本)を放って攻めたもののゴールできず、結果的にイニエスタ、ルーカス・ポドルスキ、さらにJ初ゴールを決めた郷家友太らの引き立て役になってしまった。

 そんななか、試合終盤、小さなドラマが起きていた。

 湘南が0-1とリードを許すなか、69分、梅崎司が秋野央樹と代わってピッチに立った。その後1点を追加されて、選手交代もあり、湘南の背番号7は右サイドから左サイドへとポジションを移す。

 80分、神戸はJデビュー戦とあって体力を消耗したアフメド・ヤセルがベンチに退き、那須大亮が交代出場する。そこで実現したのが、梅崎対那須という2013年から17年までの5シーズンにわたって浦和のチームメイトだった二人のマッチアップだった。

「サイドに入ったら、ウメがいたので、『お、懐かしいな』って思いながら、嬉しかったです」

 那須も一段と気合いが入った。

 そして梅崎はタッチライン際や少し中央で、ボールを受ける位置に変化をつけて、積極的に縦へドリブルで仕掛けていった。

 だが湘南はゴールを奪えず……。ネットを揺らすことはできなかった。

 久々の対決に那須も「ウメの特長は分かっていました。ドリブルで仕掛けてきて、縦に来ることも。だから、変に危ないコースにクロスを上げさせないようにと思って、そこを意識して対応していました」と語っていた。

 後日その話題を振ると、梅崎も「面白かったですね」と言った。

 ただ、彼にとって、あの那須とのマッチアップはシーズン中のちょっとした分岐点になったというのだ。

「実は、あそこでドリブルの重要性を再認識させてもらいました」

 シーズン序盤は軽いケガもあったが、ロシア・ワールドカップによる中断前から先発での出場が徐々に増えた。ただ、中断明けも連戦の中で中心的存在を担っていたが、まだ「絶対的」と言えるほどの存在にはなりきれずにいた。
 
「どちらかというと、それまではクロスのためのドリブルをしていました。中でいかにして合わせるか。タイミングを合わせようと。

 ただ、チームとしての課題でもあったけれど、それだけではダメだと感じていました。いかに深く相手の嫌がるところへえぐっていけるか。という、ところが大切だと、すごく痛感したんです」
 

次ページ神戸戦後、梅崎のパフォーマンスは一段と凄みを増した

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