金田喜稔がベトナム戦を斬る! 「勝ったからOKという考え方もできる。でも、先にもっと大きな目標を描いているなら…」

2019年01月25日 連載・コラム

サイドバックの攻め上がりに物足りなさが。

引いた相手をどう攻略するか。日本代表は今後、この課題と真剣に向き合っていく必要がありそうだ。(C)Getty Images

 今日も勝てたのは素晴らしかった。2試合連続で無失点というのも、結果としては申し分ない。でも結局のところ、相手が後ろに人数をかけて守ってきたときに、どうやって崩していくのか。この問題は、最後まで解決されなかった。

 ベトナムは中央にひとりフリーマンを置いた5バックを敷き、中盤も4枚が自陣に引いて守っていた。フォワードをひとり前線に残してね。だから、もし日本がカウンターを食らったとしても、数的不利の状況に陥ることはまずありえないのに、酒井や長友に思いっきり飛び出していく動きがなかったのは少し残念というか、不思議だった。

 堂安が中に入って、原口も中に入って、相手のサイドバックも彼らについて内側に絞る動きを見せたとき、空いたサイドのスペースに酒井や長友が飛び込んでこないようでは、とても引いたチームを崩すのは難しいよ。

 とくに長友は、ほとんど攻撃に参加しなかった。もしかしたら監督から「カウンターに備えてあまり上がらないように」という指示が出ていたのかもしれないけど、それにしても、あれじゃあ物足りない。

 もちろんサッカーだから、優先順位として真っ先に狙うべきは相手のゴールだし、エリア内を崩すことなんだけど、あれだけ中をガチガチに固められたら、たとえば、北川と南野にボールを預けて、そこから崩そうというのは簡単じゃない。

 となれば、やっぱり外から崩すしかなく、サイドで数的優位の状況を作ろうとすれば、サイドバックの攻撃参加は不可欠。長友なら、やや左寄りにいることが多かった柴崎との連携から、もっとサイドのスペースを攻略しても良かったんじゃないかな。

 相手がスペースと人を消してきたときにどうやって攻めるのか。そのためのアイデアが、とくに前半はほとんど見られなかったね。
 
 まあ、後半は相手の足が止まり始めたことで、前線の選手が少しずつ"顔出し"ができるようになって、縦パスも入るようになった。それによって攻撃にリズムが生まれ、ドリブルで仕掛ける回数も増えたことで、堂安がPKをもらったあのプレーにつながるんだけど…。

 欲を言えば、もっとしっかりポゼッションしたうえで、チャンスの数でもシュートの数でも圧倒してほしかったね。そういうゲームを、失点をゼロに抑えることを前提に、当たり前のようにやっていかないと、もう少しレベルの高いチームを相手にしたときには勝てなくなる。

 もちろん、このベトナム戦の最大の目的は「勝つこと」だ。だから、その目的を果たしたことについては高く評価しなければいけない。でも、今後ワールドカップでの上位進出を本気でめざしていこうとしたとき、じゃあ、どういうサッカーをしていかなければいけないのか――というところまで思いを巡らせ、そこから逆算して考えた場合、今日のゲーム内容にはやはり不満が残る。

 サッカー新興国のベトナム相手にレギュラー組中心のメンバーで臨んでいながら、あの戦いしかできないようでは少し先が思いやられる。大迫がスタメン出場を果たすことができれば…。崩しのキーマンとなるはずだった中島が参戦できていれば…。たしかに、エクスキューズはいろいろ挙げられるけど、それでも、今日の出来に納得することはできない。

 VARでPKをもらえたのだって、はたして、他のレフェリーも同じジャッジをしたかと言えば、そうではないと思う。「勝てたんだからいいじゃないか」って考え方ももちろんできるよ。でも、先にもっと大きな目標を描いているのであれば、結果だけでなく内容についても重視していかなければいけないとは思うよね。
 

次ページあれを続けていたら必ずどこかでボロが出る。

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