冨安健洋の恐るべき安定感と付加価値。CKからのゴールは洞察力の賜物だ

2019年01月23日 清水英斗

サウジアラビアが守備戦術を変えたのは、冨安にも分かっていたはずだ

冨安(16番)は20歳とは思えぬ落ち着きと安定感で、CBコンビを組んだ吉田とともに守備を支えた。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 アジアカップ・ノックアウトステージのサウジアラビア戦は、20分にコーナーキックから、冨安健洋がヘディングシュートでゴール。これが決勝点となり、日本が1-0で勝利を収めた。
 
 サウジアラビアは、グループステージ第3戦のカタール戦でも、コーナーキックから失点している。日本としては、この弱点を突く目処が立っていたのだろう。
 
 ただし、カタール戦のサウジアラビアは、日本戦とは戦術が異なり、ゾーン+マンツーマンの形だった。空中戦に強い4~5人をゾーンで配置し、3人がマンツーマンで相手のキーマンに付く。
 
 セットプレーで点を取る選手はだいたい決まっているので、その選手だけをマークして、あとは捨てる。ゾーンで守る。マンツーマンの3人はMFやサイドバックが多く、大抵ミスマッチになるが、目的は競り勝つことではなく、相手の動きを邪魔し、ゾーンの味方に勝たせること。効率的な考えであり、現在の欧州サッカーでも、この戦術を採るチームは増えている。
 

 このサウジアラビアに対し、カタールはうまく隙を突いて得点した。ポイントは、いかにマンツーマンを外しつつ、勢いを持ってゾーンの間に入るか。カタールのFWアルモエズ・アリは、GKの前に立ち、相手がマークしづらいポジションを取って、そこからゾーンの選手がいないニアポスト、あるいはゾーンの隙間へ下がりながら、勢いを持ってヘディングの競り合いに行った。84分の追加点以外にも、同様の形で何度もチャンスを作っている。
 
 当然、冨安の頭の中にも、同じような崩し方はインプットされていたはず。いかにマークを外し、ゾーンの隙間を突くか。
 
 ところが、うまくいっていないチームは、その部分を変えてくるものだ。実際、サウジアラビアも守備戦術を変えた。ゾーン+マンツーマンをやめ、単純なマンツーマンに切り替えた。このような相手の変化には、選手がピッチ内で見て、即時対応する力が求められる。
 
 冨安としても、察するヒントは転がっていたはず。第一に相手がゾーンの陣形を作ろうとしない。第二に、本来ならゾーンに組み入れるはずのCB、23番のムハンマド・アルファティルが、自分のマークに来ている。

次ページ正直に言えば、冨安がこの大会で“やらかすこと”は、仕方がないと思っていた

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事