韓国相手に大健闘!愛称は“雑種犬”、フィリピン代表の背景にある出稼ぎ労働者と混血選手|アジア杯

2019年01月20日 佐々木裕介

フィリピンサッカー界が採用する強化策の柱とは

3連敗で敗退となったフィリピン代表だが、韓国相手に健闘を見せるなど大会に爪痕を残した。(C) REUTERS/AFLO

 "パウリーノ・アルカンタラ・リエストラ"という名のフットボリスタをご存知だろうか?

 スペインとフィリピンにルーツを持つ混血選手である彼は、選手生活16年のうち、のべ14年をFCバルセロナで過ごし、積み上げたゴールは実に"369"。この数字はリオネル・メッシに抜かれるまで、長年クラブの最多ゴール記録であった。ブラウグラナの歴史に強烈に名を刻んだアタカンテである。

 そんな彼が2年間だけ、フィリピンの地元クラブに在籍していた時期にフィリピン代表にも選出されプレーしていたという。A代表でも都度、国を選べた時代だ。

 話を今回の本題へ移そう。アジアカップに初出場を果たしたフィリピン代表についてである。

 アジアサッカーの勢力図では、極東と中東の陰に隠れ、長らく陽の目を見なかった東南アジアだったが、昨今の成長は著しい。今大会には3か国(フィリピン、タイ、ベトナム)が予選を勝ち抜き、フィリピンとベトナムにとっては、記念すべき初出場となった。

 そのフィリピンには、強化の要因となった重要な背景がある。それが"出稼ぎ労働者"の存在だ。

 世界各地で出稼ぎをするフィリピン人労働者は多い。また現地で良縁に恵まれて結婚し定住する場合も少なくない。もちろん、欧州諸国に渡る人々もおり、彼らの間に生まれ、サッカー先進国でボールを蹴って育つ子どもたちも数多い。そうした環境で育まれたフィリピンにルーツを持つ選手たちを、積極的にフィリピンへ呼び寄せる――。これが近年、フィリピンサッカー界が採用する強化策の柱なのだ。
 
 今大会にも出場したダイスケ・サトウ(セプシ・スフントゥ・ゲオルゲ所属/ルーマニア1部)。日本人の父とフィリピン人の母を持つ彼もまた、この強化策にはまり招聘された選手のひとりである。

 さらに昨年10月には、かつて外国人として初めてサッカーの"母国"イングランドの代表監督を務めたスヴェン=ゴラン・エリクソンがフィリピン代表監督に就任し、サポーターを賑わせた。就任後すぐに迎えた昨年末のスズキカップでは、準決勝で優勝国・ベトナムの前に屈したが、ベスト4へと導いてみせる。そして迎えた今回のアジアカップ。サッカー好きなフィリピン国民は活躍を期待せずには居られなかった。
 

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