イングランドはいかにして黄金期を迎えたのか? カギとなったのはある“地域”での原石発掘【現地発】

2019年01月20日 スティーブ・マッケンジー

有望な若手を輩出している地域とは?

昨今のイングランド・サッカー界が生み出した若手有望株の筆頭として期待を集めているサンチョ。ドルトムントで研鑽を積んでいるヤングスターもサウスロンドンの生まれだ。 (C) Getty Images

 昨今のイングランド代表の飛躍には目覚ましいものがある。

 2017年6月に韓国で行なわれたU-20ワールドカップでアンダー世代が世界王者になった。そして、それに続くかのようにA代表も昨夏にロシアで行なわれたワールドカップで1990年のイタリア大会以来となるベスト4進出を果たし、新たなる黄金時代の到来を予感させている。

 次代の担い手として期待される若手たちの名前を挙げれば、ジェイドン・サンチョ(ドルトムント)、フィル・フォデン(マンチェスター・シティ)、ライアン・セセニョン(フルアム)と、それこそ枚挙に暇がない。

 日本の皆さんは、スリーライオンズ(イングランド代表の愛称)の未来を嘱望されている原石たちを最も多く発掘しているエリアをご存じだろうか? それはロンドンに流れるテムズ川の南側に位置するエリアなのである。

 サウスロンドンは、イングランドの人口の約5.2パーセントに当たる280万人が住んでいるエリアで、今シーズンのプレミアリーグでプレーしたイングランド人の10パーセント以上がこのエリアの出身者だ。

 昨年10月にU-21イングランド代表がスコットランドU-21代表との親善試合に臨んだ際には、トミー・エイブラハム(チェルシーからアストン・ビラにレンタル移籍中)、アデモラ・ルックマン(エバートン)、R・セセニョン、リース・ネルソン(アーセナルからホッフェンハイムにレンタル移籍中)ら8人のサウスロンドン出身者がピッチに立った。

 さらにガレス・サウスゲイトが率いているA代表でもロシア・ワールドカップ以降、サンチョ、ジョー・ゴメス(リバプール)、ナサニエル・チャロバー(ワトフォード)、そしてGKのマーカス・ベッティネッリ(フルアム)が名を連ねたが、彼らはいずれもサウスロンドンの生まれだ。

 では、なぜサウスロンドンからこれだけのタレントが生まれ育つのか? それは異なる文化が混在するエリアだからである。

 ご存知のようにロンドンは、アジア、ヒスパニック、アフリカンなど、様々な系統の人種が居住する場所だ。サウスロンドンも近年、多種多様なバックボーンを持った人が生活するようになったことで、これまでの世代と異なったスタイルのサッカー選手が誕生し、成功を掴んでいる。

 マンチェスター・シティからドルトムントに加入し、才能を開花させたサンチョもその一人だ。彼はトリニダード・トバゴ人の両親の下に生まれたせいか、そのプレースタイルは力任せな伝統的なイングランド・サッカーとは一線を画し、実にテクニカルだ。

 彼のような数多の原石が発掘されるサウスロンドンでは、当然、熾烈な競争が待っている。よって、幼いころからプロになるために必要不可欠な要素の一つでもある精神的なタフさと回復能力を身に付けられるのだ。それもまた、多くのタレントを輩出する要因とも言えるだろう。

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