【横浜】“リトル・アマジュン”に囁かれて――「新10番・天野純」の誕生秘話

2019年01月14日 広島由寛(サッカーダイジェストWeb編集部)

「ようやくここまできた。10番への憧れもあった」

今季から新たにトリコロールの10番を背負うことになった天野。代えの利かない司令塔として、さらなる活躍が期待されている。写真:滝川敏之

 2019年シーズン、空き番となっていたJ1の横浜F・マリノスの10番は、天野純が背負うことになった。
 
 14番を付けていた昨年の夏が終わる頃、天野自らがチームに希望を伝えた。自分自身と向き合い、自問自答した末の結論だ。
 
「本田圭佑さんじゃないですけど、"リトル・アマジュン"が言うんです。『10番、つけないのか』って」
 
 17年シーズンまで、10番は齋藤学が背負っていた。その齋藤が昨季、川崎に移籍。10番は空いたままになっていた。齋藤のほか、中村俊輔(現・磐田)や小野裕二(現・鳥栖)と、近年は、横浜の下部組織出身でクラブを代表する選手が付けてきたナンバーでもある。
 
「2、3年前まで、(自分は)一歩二歩下がるみたいな日々だったけど、ようやくここまできた。下部組織からずっと育ってきて、10番への憧れもあった」
 
 昨季は自身初のリーグ戦全34試合に出場。日本代表にも初選出された。充実一途のシーズンを過ごすなかで、確かな自信と手応えを掴んだ。トリコロールの中心的存在――そういう見方に異論を唱える者は少ないはずだ。
 
「10番は、小学校にプライマリー(横浜の下部組織)で付けて以来ですね」
 
 プレッシャーについて聞けば、「特に、ないかな」。重圧を感じるよりも、自らのさらなるステップアップを切望する。
 
「もうひと皮、ふた皮、剥けていない感じが自分の中でまだある。どうしたらそこを乗り越えられるかと考えた時に、10番を背負って、もちろんプレッシャーとかも感じながら、そこでチームを勝たせることができれば、もうワンランク上の選手になれる気がする」
 
 1月10日のチーム始動日、天野のジャージは26番だった。話を聞いた同14日も同様の身なり。同13日の新体制発表会で「新10番・天野純」が明らかになったわけだが、「それを隠す意味で、26番を着てたの?」と質問すれば、「いやいや(笑)。14番(以前の背番号)のジャージのサイズが少し小さかったので」と他意はないようだ。
 
「だってほら、ここはもう、こうですから」と、足を少しかかげてみせる。練習後に履くスリッパには、白いペンで「10」と記されている。その数字は、ほんの少しだけ掠れていた。
 
取材・文●広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
 
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