【小宮良之の日本サッカー兵法書】 耐えられないほどの重圧を受けるプロ選手たちの様々な克服方法

2019年01月13日 小宮良之

鬱、自信の喪失…

現在はエバートンで奮闘中のA・ゴメス。バルサ在籍中は、外圧より、むしろ自分自身がかける重圧に耐えられなかったのだという。 (C) Getty Images

 プロサッカー選手は、周りから強い重圧を受ける。その日々は、精神的にも大きな負荷となる。結果として、鬱に近い状態に陥ってしまうケースも珍しくない。
 
 例えば、スペイン代表として南アフリカ・ワールドカップでは栄光のメンバーのひとりとなった攻撃的MFヘスス・ナバス(セビージャ)は、若い時に鬱を患ったことを告白している。
 
 彼の場合、原因は強度のホームシックだった。移籍はもちろん、遠征さえも苦手とした。地元セビージャの外でプレーすることに対し、ひどい重圧を感じたのだという。
 
 しかし、歳を重ねることで、彼はそれを克服。アウェーでの試合を苦にしなくなったし、イングランド・プレミアリーグ(マンチェスター・シティ)へも移籍した。W杯戦士として、代表チームにも帯同している。
 
 鬱に対しては、絶対的なクスリも対処法もない。時間をかけ、当事者のペースで克服するしかない側面がある。なかなかひとりでは抜け出せないもので、周りの協力が不可欠になる。
 
<自信の喪失>
 
 これは、プロ選手としては重大な事態であり、こうなると十分に力が出せなくなってしまい。
 
 昨シーズンまでバルセロナに在籍していたポルトガル代表のアンドレ・ゴメスも、それに近い状態だったという。
 
「バルサ時代は難しかった。馴染むことができなくて。もちろん、良い瞬間はあったんだけど……」
 
 今シーズン、プレミアリーグのエバートンに新天地を求めたA・ゴメスは、当時の心情を明かしている。
 
「自分がうまくいかないことで、父や母が苦しそうにしているのを見るのが辛かった。ファンの期待に僕が応えられなかったわけだけど、実はそれだけでなく、自分自身の不甲斐なさにも苦しんで……。ときに、家から出たくないとも感じたよ」
 
 引きこもりに近いような精神状態で、どうにかトレーニングを続けた。しかし、いざ試合になると、本来のパフォーマンスを発揮できず、また批判にさらされることに……まさに、悪循環に陥っていたのである。

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