【日本代表 コラム】4年後を見据えながらも現実路線を採ったアギーレ監督の人選

2014年08月28日 加部 究

選ばれたのは「堅守速攻」の構想に則り、伸びしろがあると判断された選手。

アギーレ監督の初陣メンバーには驚きの名前もあったが、その特徴を探れば指揮官の意図は明確なものだ。(C) SOCCER DIGEST

 ハビエル・アギーレ監督は、決然と変化を選択した。                        
 
 就任会見では、過去4年間のアルベルト・ザッケローニ時代に対しての言及は避けたが、最初の23名の人選には明確なメッセージが込められた。
 
 アギーレ監督は4年後に照準を合わせてチーム作りを始める。しかし年明けのアジアカップでは優勝がノルマになる。そこでブラジル・ワールドカップの主力を残しながら、一方で敢えてサプライズの人選をした。つまり数か月後に結果を出すメンバーと、近未来を見据えた半ば育成組を用意したことになる。
 
 ザッケローニ前監督も、実績の少ない若手を招集したことがあったが、今回は技術委員会も呆気にとられるほどの人選である。個人的にも、一度も見たことのない選手が日本代表に抜擢されるケースに遭遇したのは、ハンス・オフト時代の高木琢也、森保一以来だった。
 
 そして新顔の特徴を探れば、アギーレ監督が何を求めているかが浮き上がる。ザッケローニ監督は「私はバランスを大切にする」と主張しながら、日本協会の依頼に基づき、ボールを保持しながら攻撃する時間を増やし、数多くのチャンスを築こうとしてきた。俊敏で器用な日本人の特性を活かすためにも、あまりサイズにはこだわらなかった。
 
 だがアギーレ監督は、この流れを踏襲したままでは勝てないと判断した。新顔メンバーに共通するのは高さだ。GK林彰洋、CB水本裕貴、MF扇原貴宏の復帰組、所属クラブでもまだレギュラー当落線上の坂井達弥、皆川佑介、さらにSBとしてはスケールのある松原健、躍進神戸を牽引する森岡亮太。全員が180センチを超えており、当然平均身長は一気に引き上げられた。
 
 一方、大方の予想通りに初選出された武藤嘉紀は、前線から労を惜しまず守備に貢献しながら、カウンターでは飛び出して行けるスピードを持っている。アギーレ監督は「将来性のある選手を」と語っていたが、選ばれたのは「堅守速攻」という構想に則り、伸びしろを持つと判断された選手たちだった。

次ページ日本で最も共感を呼ぶ理想を追求する、吉武監督へのアンチテーゼにも映る。

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