【小宮良之の日本サッカー兵法書】 ファンのブーイングや罵声に選手たちはいかに対応するべきか!?

2019年01月06日 小宮良之

選手にとってブーイングは“不都合な真実”

サンチャゴ・ベルナベウの熱は今シーズン、マドリーの選手にとって負の方向に作用しているようだ。 (C) Getty Images

 スタジアムでのブーイングは、選手のメンタルにどのように作用するのだろうか?
 
「ブーイングをバネに、という話がよくありますよね? でも、あれを受けて良い気持ちになるはずはないですよ。正直、とてもネガティブな気持ちになります」
 
 あるJリーガーは言ったが、同じ意見がほとんどだろう。罵られ、嘲られる。これがポジティブではないのは、想像の範疇だ。
 
 特に、味方と思っていたホームのファン・サポーターから受ける非難の罵詈雑言は、堪えるという。どうしようもできないのに――。そのやるせなさは、相当なものだろう。
 
「僕は、ブーイング賛同派ではないよ。ブーイングを受けることで、チームは弱体化する。個人的には拍手賛同派だ」
 
 そう語ったのは、レアル・マドリーのMFマルコス・ジョレンテである。ホームで勝利した試合にもかかわらず、容赦ないブーイングを受けた後のコメントだった。
 
 2018-19シーズンのマドリーは、国内リーグで近年にないほどの不振に喘いでいる。サンチャゴ・ベルナベウのファンは、その戦い方に失望した。結果、負けた時は言うまでもなく、勝っても非難の口笛で憂さを晴らすようになった。
 
「自分だけでなく、チームメイトに対してもブーイングが浴びせられる。それは、とてもやるせない。もっと良いプレーができる、と信じてやるしかないんだけど……」
 
 ジョレンテは苦しい心の内を明かしている。
 
 チームメイトであるイスコは、マドリディスタの辛辣なブーイングに対し、やり返してしまった。これが炎上……さらに非難を浴びる羽目となった。
 
 選手は、プレーがうまくいっていないことに気付いている。それを改めて指摘され、厳しい言葉を浴びせられる。選手にとって、ブーイングは"不都合な真実"であり、分かっていても、どうにもならない。そこで生じる不甲斐なさに、彼ら自身も苦しんでいるのだ。
 
 ブーイングは、精神的に「健全」ではない。
 
 しかし一方で、ファンの要求の高いクラブほど、勝利を積み重ねているという現象も起きているのだ。

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