【選手権】四中工を牽引した主将・山本龍平が後輩たちに残した得難き財産

2019年01月02日 安藤隆人

高校生活初となる全国大会出場を最後の大会で実現させた

来季の松本加入が内定している山本(5番)は、コンバートされたCBのポジションで奮闘したが勝利には届かなかった。写真:田中研治

[高校選手権・1回戦]秋田商 2-0 四日市中央工/12月31日/フクアリ
 
 最初で最後の選手権は、初戦敗退という形で幕を閉じた。
 
「3年生になってから行き詰まった試合ばかりで、情けないプレーしか出来ていない。リーダーとしてのプレーが今日も出せなかった。凄く悔いが残る高校サッカーだと思っています」
 
 四日市中央工のキャプテンで、来季の松本山雅FC加入が内定しているCB山本龍平は、秋田商に0-2で敗れた後のミックスゾーンで唇を噛んだ。
 
 広い視野と精度抜群の左足を持つ山本は、入学直後からレギュラーに抜擢されるほど、樋口士郎監督から絶大の信頼を勝ち取っていた。その時のポジションは左サイドバックで、高2になるとFWとボランチを任されていた。スピードに乗った突破からのクロスや、裏への抜け出しからのシュートなど、攻撃面で才能の片鱗を見せていた山本だったが、チームは思うように結果が出ず。インターハイ予選、選手権予選すべて敗退し、1年次のプリンスリーグ東海では最下位に沈んで、県リーグ降格の憂き目に合った。
 

「全国に出てプロになるために四中工に入って来たのに結果が出ずに凄く悔しかった。3年になって絶対に結果を出さないといけないと思っていた」と、覚悟を持って臨んだ今年、彼を待っていたのはコンバートだった。「守備で核になる選手がおらず、龍平をCBに置かないといけない状態だった」と樋口監督が語ったように、チーム事情でCBを任されたのだ。
 
「最初はやりたくないと思っていましたが、チームにとってこの場所(CB)が重要だっただからこそ、自分が任されているんだと思ってやりました」
 
 責任感が人一倍強いからこそ、指揮官の想いを汲み取ってCBとしてプレーし続けた。地元開催のインターハイ予選で敗れるなど、苦難の連続だったが、山本はCBのポジションで空中戦や1対1の守備やカバーリングを磨き上げ、奪ってから得意の左足のキックを活用。その適応力と武器が松本のスカウトの目に留まり、プロ内定を勝ち取り、そして、高校生活初となる全国大会出場を最後の大会で実現させた。
 

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