全国制覇を狙う青森山田の強みは「対応力」。とりわけ、後方「6枚」のクオリティは抜群だ

2018年12月31日 川端暁彦

2016年の2冠は「全部やれるチームになる」の集大成だった

青森山田は今季も質の高いチームに仕上げてきた。写真:川端暁彦

 青森山田高の黒田剛監督が「ようやく分かってきたんだ」と語ったのは2016年シーズンの途中のことだった。
 
 2011年の高円宮杯プレミアリーグ創設に伴い、青森山田のメインステージは「東北」から「東日本」が日常となった。Jユースを含めた強豪と日常から競り合える環境は個人を育てるという意味でポジティブだったが、これまでになかった問題点にも直面することになる。
 
「プレミアリーグで強豪相手に勝つためにはカウンター中心でいったほうがいい。最初は(リーグに)残留していくためにはそれしかないと思っていた。ところが高体連の大会に出ると、力関係でこちらがボールを持つゲームになることが多い。そうなると、普段はカウンターばかりやっているせいで、うまく切り替えられなくなっていた」(黒田監督)
 
 この悩みを超克していく方向性が見えたのは、神谷優太らを擁した2015年シーズンのチームだった。プレミアの戦いと高体連の戦いを「切り替えられない」という問題から一歩進んで、「そもそも分けて考えない」チーム作りへのシフトチェンジである。「ポゼッションもカウンターもセットプレーも全部やる。全部やれるチームになる」という明確な方向性を打ち出してリーグ戦を戦うようになると、リーグ戦の結果までついてきた。2016年にリーグ戦の高円宮杯とカップ戦の高校選手権の2冠を達成したのはその集大成である。
 

 今季のチームもそうした流れの中にあるので、「青森山田ってどんなサッカー?」と聞かれると、意外に答えにくい。後ろからボールを繋いで運んでいくサッカーもできるし、割り切って蹴りまくる時間帯も意図的に作ることもある。中央からの細かい崩しもあれば、一気呵成のカウンターアタックもある。相変わらずセットプレーも強い。守りでも、果敢なハイプレスを仕掛けることもできるし、ブロックを作って固めることにも対応可能だ。
 
 もちろん、それが可能なのはフィジカル、戦術の個々のベースレベルの高さがあるからだ。特に今季は後方の「6枚」のクオリティが高い。安定感抜群のGK飯田雅浩を最後の砦に配し、その前にはU-19日本代表、192センチの超大型DF三國ケネディエブスと沈着なプレーの光る二階堂正哉。右には攻守でパワフルに存在感を発揮する橋本峻弥、左には1対1で守ってよし、攻め上がってよしの豊島基矢。そしてアンカーには周りに目を配って効きまくる天笠泰輝がいる。6人とも繋ごうが蹴ろうが(それは味方でも対戦相手でも)対応可能。このベースは明確な強みだ。
 

次ページ増やしてきた戦術的な引き出しを状況に応じて出し尽くす

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事