【小宮良之の日本サッカー兵法書】 蹴球界のさらなる成長を促すJリーグの真の「ピラミッド」化

2018年12月23日 小宮良之

4部リーグの選手が1部でも活躍できるスペイン

日本の場合は学校のサッカーもあり、強豪国とは異なる部分が少なくないが、リーグの裾野を広げることが、トップリーグのレベルをさらに上げ、引いては代表チーム、そして日本サッカー全体の成長にも繋がるのは間違いだろう。 (C) Getty Images

「なぜJリーグでは、下部リーグから選手をもっと引き上げられないのか。欧州では、4、5部リーグの選手が1部で活躍することもある。そうした突き上げによって、競争力は上がるはずだが……」
 
 そういう素朴な疑問を、たまに抱く。
 
 確かに、J1、J2では選手の行き来があるものの、J3やJFLの選手がJ1のクラブに引き抜かれていきなり活躍するというケースは極めて珍しい。そこには、見えない高い壁がある。5部以下に当たる地域リーグにいたっては、ここからJ1チームのレギュラーになるのは奇跡に近いだろう。
 
 その一方、リーガ・エスパニョーラ(スペイン)では、3部、4部の選手たちが1部で活躍するのは日常茶飯事だと言っていい。
 
 例えば、スペイン代表として今夏のロシア・ワールドカップに出場したレアル・マドリーのDFナチョは、10代は4部で、20代前半も3部でプレー。そこで実績を積むことによって、世界王者マドリーのトップチームでポジションを掴むまでになった。
 
 ナチョのケースは、マドリーのサードチーム、セカンドチームを経験したというものだが、武者修行のように下部リーグを経験し、1部のチームで定位置を得たという事例も少なくない。
 
 ヘタフェのFWホルヘ・モリーナは、3部でゴールを量産し、2部時代にはエルチェで得点王になったことにより、1部でプレーする機会を得ている。
 
 また今シーズン、エスパニョールでブレイクしているボルハ・イグレシアスも、4部、3部で得点を積み重ね、2部のレアル・サラゴサで22得点という実績を引っ提げて、1部クラブとの契約を勝ち取った。
 
 レバンテのDFトーニョ、バジャドリーのMFルベン・アルカラスにいたっては、地域リーグである5部から這い上がってきた。
 
 下からの突き上げが、世界最高峰といわれるリーガ・エスパニョーラの屋台骨を支えているのは間違いない。
 
 ではなぜ、Jリーグでこの「競争現象」が起きないのか。
 
 残念ながら、"土台"が違いすぎるのだ。

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