浦和の「裏の番長」と評される男――平川忠亮が監督、チームメイトから尊敬されたワケ

2018年12月11日 佐藤亮太

2011年、浦和が残留争いをした当時、ふてくされていた柏木に平川が掛けた言葉

今季限りでの引退を発表した平川。最終節ではホームでサポーターへ挨拶を行なった。(C) SOCCER DIGEST

 曰く、バンディエラ。曰く、サッカー偏差値「70」。"野人"と呼ばれた岡野雅行をして「俺より速い男」。17年間の現役生活を終えた浦和レッズDFの平川忠亮を表わした言葉だ。

 浦和には、12大会ぶりに天皇杯を制覇しなければならない理由があった。それは目標とした来季ACL出場のためだけでない。ピッチを去る平川に優勝カップを掲げさせたいというチームメイトの強い想いがあったからだ。決勝点となった宇賀神友弥の一撃は、永遠のライバルとして慕い、尊敬する平川への熱い想いがこもっていた。

 これは選手だけではない。2002年、強化部長として初めて加入に立ち会った中村修三GMは「大卒で39歳までやれる選手はなかなかいない。平川はレッズのタイトルをすべて知っているので感謝とリスペクトしかない。(契約更新しないことを)通達した時に思わず、ウルっと来たが、最後が自分で良かったと思う」と語った。

 長く現役を続けるには、質の高いプレーはもちろん、チームに良い影響を与える存在であることが問われる。

 チーム内での平川はどんな存在か。長く浦和に在籍し、若手時代から知る野崎信行アスレティック・トレーナーは平川を「良い意味で、裏の番長」と表現する。
「常に選手はヒラ(平川)のことを見ているし、ヒラもそのことを意識している。背中で語るという面もあるけど、言う時にはしっかり言ってきた。そして、それを決して表に出さなかった。浦和には個性的な選手がいるが、チーム内での影響力は大きい」と語った。
 
 その一例が柏木陽介だ。浦和が残留争いをした11年。レギュラーを外され、ふてくされる柏木に平川は「今のお前のままでいいのか?」と叱咤した。この時のことを柏木は「俺も苦しかった。ただ、ヒラさんも苦しいなかで説教してくれた。腐っていた自分を前に向かせてくれた」と話した。

 実は以前に、この柏木とのやり取りを平川に詳しく聞こうとした際、即座に「イヤ、それはいいでしょ。もうアイツは大丈夫だから」と制されたことがある。柏木への配慮がうかがえた。
 

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