【現地発】バルサのアルトゥール、活躍の秘訣は“首の位置”にあり? イニエスタやシャビと比較も

2018年11月29日 エル・パイス紙

外様ながらバルサ・イズムの継承者に名乗り!

入団1年目から存在感を発揮するアルトゥール(右)。現在バルサでプレーするどのカンテラーノ(下部組織出身者)よりも“バルサらしさ”が感じられる選手だ。(C)Getty Images


 バルセロナが今シーズン最高ともいえる会心の内容で勝利を収めたチャンピオンズ・リーグのトッテナム戦で出色の働きを見せたのがアルトゥールだった。91%という高いパス成功率を記録し、セルヒオ・ブスケッツ、イバン・ラキティッチとともに中盤を支えた。

「アルトゥールはパスワークに安定感があり、ボールを失うことがない。彼が中盤でプレーすることでゲームが支配しやすくなる」。エルネスト・バルベルデ監督も試合後、この新加入MFの活躍に目を細めた。
 
「アルトゥールの活躍の秘訣は"首の位置"にある」

 そうした独特の表現でアルトゥールのプレーを称賛したのは、バルサのスポーツディレクターとしてこのブラジル代表MFの獲得に尽力し、昨シーズン限りでクラブを退団したロベルト・フェルナンデスだ。彼はその真意をこう説明する。

「バルサの中盤でプレーするには、つねに首を振って周囲の状況を把握しなければならない。そうでなければ、ボールを受けるときに適切なポジションを取ることができないし、ターンだったり、ファーストタッチで前を向いたりといったプレーも不可能だからだ」

 特筆すべきは、アルトゥールがこうしたマシア(バルサ・カンテラの呼称)のDNAとも言えるプレーを、ブラジルにいながら身につけたことだ。彼はそのために「ひたすらイニエスタのプレーを真似した」と振り返る。

「イニエスタのターンやインテリジェンスを参考にしていた。そのためにジェスチャーからプレーまで一挙手一投足をつぶさに観察したよ。家の中でも壁に向かってボールを蹴ったり、繰り返しターンの練習をしたんだ」

 2014-2015シーズンに5度目のCL制覇を成し遂げて以来、バルサで新たにレギュラーに定着したのはCBのサミュエル・ウンティティただひとり。世代交代は一向に進んでいない。

 ネウソン・セメドはダニエウ・アウベスの、ウスマンヌ・デンベレはネイマールの代役を担うレベルには至らず、アンドレス・イニエスタの後釜として獲得したフィリッペ・コウチーニョも、インサイドハーフよりウイングとしてのほうが高い適正を見せている。

 そんな中で台頭したアルトゥールは、チームに新風を吹き込むニューフェイスであり、バルサ・イズムを取り戻すためのキーマンでもあるのだ。

 開幕以来、ラインが間延びする課題を抱えるバルサだが、アルトゥールが中盤に君臨すれば、チーム全体のコンパクトネスが向上する。そして、それを可能にしているのが彼の「首の位置」なのだ。

 外様のブラジル人でありながら、バルサ・イズムの継承者として名乗りを上げたアルトゥールはある意味、フットボールのグローバル化の体現者と言えるかもしれない。

文●ファン・I・イリゴジェン(エル・パイス紙/バルサ番記者)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
 
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