ドログバが日本戦での「骨折騒動」を語る――コートジボワールの英雄を蘇らせたのは偉人からの電話だった【独占】

2018年12月05日 羽澄凜太郎(サッカーダイジェストWeb)

日本のサッカーファンの記憶にも残るアクシデント

我々の取材に気さくに応じてくれたドログバ。その表情は常に穏やかで、ピッチ上のそれとは違っていた。写真: 徳原隆元

 味方からのパスを柔らかいボールタッチで足下に収めたかと思えば、力強いドリブルでマーカーを引き剥がし、あっという間にゴールを射止める。まさに「柔」と「剛」を兼ね備えたストライカー、それこそがディディエ・ドログバだった。

 2006年ドイツ大会でコートジボワールを初のワールドカップに導き、母国の英雄となったドログバは、クラブでも数々の功績を残した。とくに今も伝説的に語られているのは、2011-12 シーズンにチェルシーで成し遂げたチャンピオンズ・リーグ(CL)制覇だ。

 在籍9年目、すでに34歳と選手として円熟期を迎えていたドログバは、ミュンヘンのアリアンツ・アレーナで行なわれたバイエルン戦に臨み、83分にトーマス・ミュラーの先制弾を浴びて万事休すかと思われた88分に値千金の同点弾を決め、チームを死地から救い出したのである。

 そして、延長戦の末に迎えたPK戦でラストキッカーを務めたドログバは、名手マヌエル・ノイアーを相手にした緊張の場面、ドイツ代表守護神の逆を突いてゴール左下隅へ蹴り込み、チェルシーに史上初の欧州戴冠をもたらした。

 そんなブルーズ(チェルシーの愛称)のレジェンドに、今回、話を聞く機会を得た。チェルシーとパートナーシップ契約を結んでいる横浜ゴムのグローバルアンバサダーとして、イベントに出演するために緊急来日していたからだ。

 取材前日に日本に到着したというドログバは、すでにいくつかのインタビューを終え、少しばかり疲労の色を見せながらも、わざと大袈裟に疲れたリアクションを見せて「問題ないよ」とおどけて場を和ます気遣いっぷり。その筋骨隆々な見た目とは裏腹に、気さくな一面も持ち合わせている点が、多くの人々から愛されたのだろう。

 ドログバは過去に二度、日本代表と戦っている。一度目は、2010年6月4日、南アフリカ・ワールドカップの開幕を直前にした強化試合。そして二度目は、2014年6月15日に行なわれたブラジル・ワールドカップのグループリーグ初戦だ。

 その2試合でのドログバの出場時間は47分と、決して長くはない。その中で日本のサッカーファンの脳裏に残っているのは、初対戦となったスイス南部の街シオンでの一戦、アクシデントに見舞われた瞬間だろう。

 この時、コートジボワールの唯一無二のエースとして君臨し、キャプテンマークを巻いて先発出場していたドログバは、日本の守備陣からは最も危険なプレーヤーとして序盤から激しいマークに晒されていた。そして、それが起きたのは15分のことだった。

 ドログバがピッチ中央付近で前を向き、ボールを浮かして突破を図った瞬間、勢いよく飛び出してきた田中マルクス闘莉王の右膝が激突。右腕を押さえて、その場でうずくまったドログバは、そのままピッチを去ったのである。

 検査結果は、右肘の骨折。競り合いの場面で起きた出来事で、不可抗力ではあったが、南アフリカ大会の初戦となるポルトガル戦を11日後に控えたなかで、悔やんでも悔やみきれない負傷だった。

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