ショックで早々に帰る子供も… Jリーグ史上稀に見るあまりに不思議で残念な一戦の顛末

2018年11月26日 前島芳雄

サポーターから人望の厚い兵働昭弘の引退試合であり、急逝した久米一正GM、藤川孝幸氏の追悼試合でもあった

様々な出来事が重なった清水対神戸の一戦。六反による珍しいGKのゴールも最終盤の出来事で霞んでしまった。(C) J.LEAGUE PHOTOS

 まさに前代未聞の試合だった。
 
 異様に長いアディショナルタイムの中で、ふたりの救急搬送、2人目の退場、乱闘寸前の小競り合い、GKによる土壇場の同点ゴール……めったにないことが重なりすぎて、表現する言葉も見つからない。
 
 キックオフ前、この一戦にはさまざまな深い想いがかかっていた。清水にとっては今季のホーム最終戦で、選手からもサポーターからも人望の厚い兵働昭弘の引退セレモニーが控えている。さらに前日(23日)夜にはクラブの副社長兼ゼネラルマネジャーである久米一正氏が急逝し、その追悼試合ともなった。
 
 神戸にとっても、2001~04年にGKコーチを務めた藤川孝幸氏の逝去を悼む試合であり、自力でのJ1残留もかかっていた。イニエスタ効果もあって今季初めて2万人を越えた超満員のアイスタを舞台に、両チームとも腕に喪章を巻き、黙祷の後にキックオフを迎えた。
 
 前半は、気負いがあったのか両チームとも少しミスが目立ったが、神戸は2列目のイニエスタとポドルスキが良い形でボールを持つと、3列目の3人(伊野波、藤田、三田)が代わる代わる追い越して前線に飛び出し、先に主導権を握る。一方、CBのフレイレが左足首を傷めて欠場した清水は、ディフェンスラインの右側(右CBの立田と右SBの飯田)が急造コンビ。神戸はその裏を突いて続けざまにチャンスを作り、26分にはイニエスタの絶妙なループパスから藤田が立田の裏に飛び出して先制シュートを決めた。
 
 だが、清水も得意のショートカウンターなどで盛り返し、39分にミスパスを拾って攻め上がったボランチ河井が、金子とのワンツーから押し込んで同点。注目のイニエスタが随所で観客を唸らせるプレーを見せ、清水も代表帰りの北川の力強いプレーなど良い面も出て、内容もイーブン。重要な一戦にふさわしい見応えのある戦いになっていった。
 
 ただ、後半は運の要素が神戸に傾く。52分の古橋のヘディングは、アイスタ特有の強い西日の影響でGK六反がボールを見失い、頭上を越えてゴールに吸い込まれた。62分の三田の左クロスは「狙わないで入ったシュートは初めて」と本人も振り返ったように、本来の狙いは逸れたが絶妙なループシュートとなって逆サイドのゴールネットを揺らして3点目。神戸が2点のリードを奪った。
 
 その後は、神戸が堅実に守りながらカウンターを狙い、清水が攻めあぐねる展開となったが、83分に藤田が2枚目のイエローカードを受けて退場になったところから流れが変わり始める。さらにCBの宮が足をつってピッチ外で治療し、神戸が9人になっていた87分にドウグラスに決められて1点差。
 
 そのまま4分と表示されたアディショナルタイムに突入したが、そこからはまったく別の試合になってしまった。
 

次ページアディショナルの前にも笛が吹かれるべき場面で吹かれなかったシーンが何度かあった

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