悲願のアジア制覇、20冠の金字塔――敬意、一体、伝統…鹿島らしさ溢れる90分

2018年11月11日 サッカーダイジェストWeb編集部

折り返しの後半こそが試合巧者の真骨頂

悲願のACL制覇、そして記念すべき20冠目を獲得した鹿島。表彰の際にはイランに帯同できなかった選手のユニホームを掲げた。(C) Getty Images

 笑顔、涙、抱擁、雄叫び。そのすべてに歓喜が満ちる。大岩剛監督に水を浴びせながら、ペットボトルまで投げつけるのは最たるものだ。ただ、今大会の鹿島を象徴するシーンは、表彰式後に凝縮された。優勝プレートやカップとともに掲げられたのは、「2」「11」「13」などの背番号が入った10着のユニホーム。ともに戦えなかった仲間に対する敬意こそ、クラブ全体で悲願の頂点を射止めた証しだった。
 
 10万人とアナウンスされた完全敵地のアザディ・スタジアム。大歓声とブーイング、そしてブブゼラが鳴り止まない異様な雰囲気の中、鹿島は11月10日にテヘランで行なわれたアジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝第2戦で、イランのペルセポリスと0-0で引き分けた。第1戦で得た2点のアドバンテージが物を言い、2戦合計2-0。ホームで快勝、アウェーを無失点で凌ぐ完勝劇だ。ACLという初めての国際タイトルで、主要タイトル20冠の偉業を飾った。
 
 しぶとさ、割り切り、強引に欲する展開への持ち込み。複数得点が必要なペルセポリスに対し、序盤で受け身に回るのは御法度だった。中盤の球際で激しく戦い続けた三竿健斗は「リスクを取るプレーよりも、シンプルに、を心掛けた。相手も裏を取られたら精神的に嫌がるのも分かっていた。みんながそういう風に相手が嫌がるプレーを選択した結果だと思う」と振り返る。共通意識のもと、名門の歴史に恥じない試合運びを見せた。
 
 前後半とも最初の15分に焦点を当てた。ここだけは引かずに警戒させる、いわばリードブロー。序盤はライン設定が低く、中盤のマークが曖昧になる場面はあったが、冷静に対応と修正を続けた。最初の決定機は鹿島。14分に鈴木優磨の右クロスから土居聖真が右足で狙う。惜しくもゴール左に外れたが、押し込みたいペルセポリスの出足に釘を打つには十分。GKクォン・スンテの好守もさえ、理想のスコアレスで前半を終えた。
 
 折り返しの後半こそ試合巧者だった。相手の圧力が強まる中、身体をぶつけ、耐えながら速攻とサイドを有効利用。漫然と進めていたわけではない。GKへのバックパスは、ほぼなし。昌子源は無理せず大きくボールを蹴り出す。「スタイルとして、終わらせ方がうまい。ちょっと嫌らしいよね。こういう舞台なら、誰も恥じずに蹴る。勝つためなら、めちゃくちゃかっこ悪くてもやっちゃう。それは憎いなぁって俺は思うよ」と昌子。あるときはセーフティーに、あるときは前に急がず時間稼ぎ。栄冠に続く美しい一進一退へ引きずり込んだ。

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