【2014南関東総体】男子準決勝|FW歴3か月、一美和成が初戴冠へのキーマンに|大津 1-0 前橋育英

2014年08月07日 森田将義

先制ゴールを引き出した一美の「記録には残らないアシスト」。

FWへのコンバートからわずか3か月しか経っていない一美だが、前線のキーマンとして決勝では勝負の鍵を握る存在となりそうだ。(C) SOCCER DIGEST

 全国大会での初の決勝進出を目指した大津は、序盤から田原悟、平岡拓己のダブルボランチを中心にテンポよくボールを動かし、試合の主導権を握った。大津らしい足下でつなぐサッカーを続けながら、機を見て「相手のSBは前に強い選手なので、その裏を意識していた」(平岡和徳監督)と、正確な展開力を持つCB野田裕喜、倉本龍吾のコンビが対角線の坂元大希、古庄壱成の両MFを目がけて斜めのロングボールを入れていく。大津は、この両サイドからの突破で攻め込んだものの1点が奪えず、前半を終えた。
 
 後半の立ち上がりは、左SB渡辺星夢からのクロスでチャンスを作り始めた前橋育英がペースを握る展開に。後半3分にはロングボールで大津DFの背後を襲い、ゴール前でMF関戸裕希がフリーでシュートを打ったが、大津のGK井野太貴が足でストップした。
 
「サッカーというのは難しいスポーツ。うちが前半で1点獲っていればゲームが違っていたし、あそこで失点していればまた流れが違った」と、平岡監督が胸を撫で下ろしたビッグセーブで失点を回避すると、大津は後半10分、古庄、葛谷と中央をテンポよく運び、ペナルティーエリアの左に流したボールを、フリーで抜けた坂元がゴール右隅に流し込んで先制点を奪った。
 
 貴重なゴールを奪った坂元とともに、指揮官が褒め称えるのは公式記録には残らない182センチの大型FW、一美和成の働きだった。
「一美がよく頑張ってくれた。彼がCBを2枚とも引き連れてくれたから、サイドの坂元がフリーで受けることができた」(平岡監督)
 一美の記録には残らない「影」のアシストが、チームに勢いを与えた。
 
 得点を奪ってからは前橋育英に押される場面が増えたが、苦しい時間帯でも一美の存在は効いていた。「デカいけど、足下がある。パスが少しズレても、ボールを収めてくれるのが助かる」という葛谷の言葉通り、クリアボールを前線で収めて、最終ラインを押し上げる時間を作るだけでなく、両サイドにボールをはたき、攻撃の起点にもなった。
 
 終了間際には自身のポストプレーからの折り返しをペナルティーエリア内で受けてシュートを放ったが、GKのセーブに阻まれ、ゴールまでは奪えず。目に見える結果は残せなかったものの、勝利への貢献度は高かった。
 陰のMVPとも言える活躍を見せた一美だが、これまではCBとしてプレーし、「負けている時のパワープレーくらいでしか、FWをやったことがなかった」(一美)。だが、160センチの田原、165センチの葛谷を筆頭に小柄な選手が揃う攻撃陣の新たなオプションとして総体予選が始まる1週間前にFWへとコンバートされた。
 
「最初は戸惑いがあったし、今でも練習が足りないと思うことが多い」と口にしつつも、FWでのプレーにやりがいを感じている。「身体の強さに加えて、瞬間の閃きでチャンスが作れたり、潜在能力が高い。ちょっと変わったFWになってくれれば」という平岡監督の言葉からは高い期待も感じられる。大津にとって初の日本一がかかった決勝で鍵を握るのは、FW歴3か月の一美で間違いない。
 
取材・文:森田将義(フリーライター)
 
【総体photo】男子準決勝|大津-前橋育英
 
男子|準決勝の結果
大津(熊本) 1-0 前橋育英(群馬)
得点者 大=坂元
 
東福岡(福岡) 3-1 青森山田(青森)
得点者 東=赤木2、木藤
    青=松木
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