残り2節でJ2首位に再浮上した松本山雅。昇格目前だからこそ思い出すべき"2年前のトラウマ"

2018年11月06日 大枝 令

次節に勝てばJ1昇格の可能性があるが…

残り2試合で首位に立つ松本。とはいえ、4位・横浜FCまでの勝点差がわずか3と油断はできない状況だ。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 いつかの情景が、瞼の裏によみがえる。
 
 J2リーグ残り2試合。松本山雅FCの次節は、J2復帰1年目のクラブと当たる関東アウェー。他会場の結果によっては、勝てばJ1昇格の可能性がある。
 
 2016年。クラブ記録の16試合負けなしで首位と勝点差同数の2位となっていた松本は、意気揚々とFC町田ゼルビアの本拠地・野津田に乗り込んだ。Jリーグ参入後は3戦全勝の相手。7連勝と猛追してきた3位・清水エスパルスの存在が頭の片隅で引っかかってはいたものの、輝かしい未来は約束されているかのようだった。
 
 それが幻影だったことに気付かされたのは、前半であっさり2点のビハインドを背負ってからだった。攻守の歯車がかみ合わず、反撃は1点どまり。この黒星によって清水に抜かれて3位に転落し、最終節も勝ったが順位は変わらずJ1昇格プレーオフに回ることとなった。そこでもファジアーノ岡山に敗れ、昇格の可能性が消滅。つかみかけた栄光が掌からこぼれ落ちて灰燼に帰した虚無感は、松本のトラウマとして今なお爪痕を残している。
 
 同じ轍を踏んではならない。
 
 もちろん細かな状況を比べれば当時との差異はあるが、土壇場で「オール・オア・ナッシング」の局面にいることに変わりはない。ましてや今回は、首位の松本から4位・横浜FCまでの勝点差がわずか3。「2連勝で自力優勝」ということ以外、なにひとつ確かなことはない。
 
 2年前に野津田のピッチで松本が失っていたのは、集約すれば「平常心」のひと言に尽きる。シーズン中ほとんどの期間で平穏な練習場にメディアが殺到するのも、サポーターのボルテージが最高潮まで上がるのも当然の成り行き。周囲のそうした状況を受け止めながらなお地に足をつけて前進できるかどうかが、松本の命運を左右するだろう。結果論だが、2年前はそれを体現できなかった。
 
 平常心で勝ち抜けるために必要なものはなにか。40節・東京ヴェルディ戦後のミックスゾーンで、そのキーワードが複数の選手から異口同音に出た。
 
「チャレンジャー精神」だ。
 

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