【現地発】危機が叫ばれるマドリーで俄然クローズアップされる「カピタン・マルセロ」の存在感

2018年10月28日 エル・パイス紙

マルセロとの関係悪化でロペテギは求心力を失った。

ピッチ内外で存在感を発揮するマルセロ。クライシスが叫ばれるチームにおいて、もっとも不可欠な男だ。(C)Getty Images

 深刻なクライシスに陥り、ジュレン・ロペテギ監督の「解任へのカウントダウン」が発動して久しいレアル・マドリーにおいて、俄然クローズアップされているのがキャプテンたちのリーダーシップだ。

 第1キャプテンのセルヒオ・ラモスは、見た目そのままの熱いキャプテンシーが特徴。発言する機会もチーム内でもっとも多いが、その言動は計算しつくされたものではなく、その場の気分任せのところがある。

 一方、第2キャプテンのマルセロは、一見するとブラジル人らしく自由奔放な人間のようにも見える。しかし、クラブスタッフのひとりは、「彼こそ偉大なるカピタン(キャプテン)だ。軽い人間のように思われているようだがとんでもない。驚くほどに常識人だよ」と異を唱える。

 実際、チーム内で発言力が大きいのはむしろマルセロのほうで、彼が話を始めると、周囲は自然と聞き耳を立てるという。
 
 今シーズン、マルセロは怪我で4試合を欠場したが、ここまでチームが挙げている全18ゴール(リーガ13得点、CL5得点)のうち10ゴールになんらかの形で絡むなど、クリスチアーノ・ロナウドが退団したチームにおいて、ますますその存在感を高めている。

 マルセロが素晴らしいのは、持ち前のトリッキーなドリブルによる単独突破だけでなく、周囲との連携プレーからも崩せるところにある。素早くシンプルにパスを交換し、チームの攻撃にスイッチを与えられるような存在で、とりわけ相手の2ライン間でボールをもらうセンスは、一流のアタッカーにも匹敵する。

 トライアングルを形成し、中盤のパス回しをサイドでサポートしながら、ここぞというタイミングで裏に抜け、またそこからの仕掛けも実に多彩だ。最近は利き足とは反対の右足で、強烈な一撃を見舞うことも少なくない。

 これほどまでに高いレベルで攻撃センス、プレーの引き出し、創造性を併せ持った左サイドバックは、長いサッカーの歴史においてもマルセロ以外に見当たらない。ロベルト・カルロス、パオロ・マルディーニといったレジェンドですらも、彼と比較すると前者は繊細さの部分で、後者はテクニックが見劣りする。

 このようにピッチ内外で強烈な存在感を発揮するマルセロだけに、スタンドプレーの連発をロペテギ監督が自身に対する挑発行為と見なし、後半開始早々(60分)に突如交代を命じたジローナ戦(第2節)での決断は、大きな波紋を呼んだ。

 試合後、「交代された理由がまるで理解できない」とマルセロは明らかに不満顔だったが、この日を境に、指揮官はチーム内での求心力を失ったとも言える。

 マルセロはその一件の後もロペテギを擁護する発言を続けているが、それはあくまでキャプテンとしての立場上、表向きの態度に過ぎない。実際は指揮官のことを、チームの刷新を目論むフロレンティーノ・ペレス会長が送り込んだ差し金と考えており、両者の関係は完全に冷え切っている。

 23日のプルゼニ戦(チャンピオンズ・リーグ)後、マルセロはチームのクライシスについて、「メンタルの問題ではない」と語った。聡明な第2キャプテンは、原因はもっと深く根源的なところにあると達観しているのだ。

文●ディエゴ・トーレス(エル・パイス紙/レアル・マドリー番記者)
翻訳:下村正幸
※『サッカーダイジェストWEB』では日本独占契約に基づいて『エル・パイス』紙の記事を翻訳配信しています。
 

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