【ルヴァン杯】曺貴裁監督率いる湘南が初優勝!寄せ書きに記された湘南スタイルの凄み

2018年10月28日 松尾祐希(サッカーダイジェストWEB)

苦節7年。湘南のスタイルはいかにして築き上げられたのか

ついにタイトルを掴んだ曺監督。自らの信念を貫き、愚直に取り組んできた成果が最高の結果につながった。写真:田中研二

 湘南のルヴァンカップ初優勝は、曺貴裁監督の積み上げてきたスタイルがもたらした賜物だった。
 
 曺監督が反町康治監督(現松本)からバトンを受け取ったのは2012年。チームは圧倒的な走力をベースに展開する猛烈なプレスと、戦う姿勢を前面に押し出すスタイルで初年度にJ1昇格。1年で降格したが、2014年に圧倒的な強さでJ2を制覇した。J1再挑戦となった翌年には攻守の切り替えに特化する"ノータイムフットボール"を謳い、8位でフィニッシュしてクラブ史上初の残留を達成。2016年は降格の憂き目に再び遭いながらも、2017年にJ2を制して1年でトップリーグ復帰を果たした。
 
 就任7年目を迎えた曺監督のもとでカップを掲げた湘南だが、結果以外でも苦しめられる面が多かった。自前で育てた主力選手も毎年のように引き抜かれ、2016年には遠藤航(現シント=トロイデン)が浦和、永木亮太が鹿島へ。J1昇格とJ2降格を繰り返す"エレベータークラブ"の宿命とも呼べるチーム作りを余儀なくされ、シーズンが変わるごとに一からスカッドの構築をせざるを得なかった。
 
 それでも、必ずと言っていいほど1年でJ1に這い上がって来るのは、クラブに確固たるアイデンティティが根付いているからだろう。運動量、素早い攻守の切り替え、球際での闘い。指揮官はそれらを極限まで突き詰めることを選手たちに求めていった。
 
 練習から100パーセントでやり切る姿勢を求められており、妥協は許されない。以前、プロ2年目の杉岡大暉や大卒ルーキーの坂圭祐は「監督の前で一切手は抜けない」と話していたほどだ。
 
 そうした戦いぶりはいつしか"湘南スタイル"と呼ばれるようになり、クラブを語るうえで欠せない"ホットワード"となった。今回のルヴァンカップ優勝も、そうしたクラブに根付く信念を体現できたからこそだろう。

 ただ、一方で忘れてはならない事実がある。指揮官が自ら"湘南スタイル"という言葉を発信していないことだ。あくまで、自分たちの戦い方を見て、周囲の人が名付けたものなのである。

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