【小宮良之の日本サッカー兵法書】 攻め続けることは危険…だがいつでも攻撃できる準備は必要だ!

2018年10月14日 小宮良之

まずは守備の準備ができているか――

試合を通し、常に相手を圧倒し続けて栄冠を掴んだバルサのようなチームを目指すのは立派だが、現実的には大きな危険を孕む。写真は2010-11シーズンのチャンピオンズ・リーグ優勝時。 (C) Getty Images

 多くの監督は、「攻撃したい」と思考する。それは自然な衝動なのだろう。なぜならサッカーの原点が、「ボールをゴールに入れて喜ぶ」という、単純明快な行為に発しているからだ。
 
 ゴールを奪うために、監督はプレーモデルを作る。どのようにボールを持ち出すのか。ビルドアップの距離感や立ち位置が、チームの骨格となる。サイドでは誰が幅を取り、誰が深みをつけ、中に仕掛けるのか。そのコンビネーションに、やはり戦い方の色が出るはずだ。
 
「攻め続けたい」
 
 ジョゼップ・グアルディオラやマルセロ・ビエルサは、そこに軸を置くことで、前線からの激しいプレッシング、もしくはマンマーキングでの激しい守備も確立している。
 
 前線でボールを奪えば、ショートカウンターは俄然、威力を増すことになる。彼らにとって、守りも攻めのために存在するというのか。その激しさは、「ポゼッションすることで守る」というような考え方を軽く超えている。
 
 もっとも、これは先鋭的過ぎる戦い方とも言えるかも知れない。攻勢には限界点がある。無限に攻めることは、体力的にも精神的にもできはしない。攻めていても、必ずその波は終わる。
 
 リオネル・メッシやアンドレス・イニエスタのような名手が要所に揃っていない限り、「攻め続ける」のは難しいだろう。「絶対にボールを失わない」というスキルのある選手を擁していなければ、成立しない。攻めかけたところで奪われて反撃を食らう、という危うさを孕むからだ。
 
 だから、単純にバルセロナのサッカーをコピーするのは難しい。
 
 そこで大抵のチームは、守備を構築するアプローチから始める。良い守備を整備することによって、攻撃のポジショニングにも繋がり、相応に機能する。相手の好きにさせない、という状況はアドバンテージになるのだ。
 
 まずは、守備の準備ができているか――。
 
 日本代表でヴァイッド・ハリルホジッチの遺産があるとすれば、その辺りだろう。攻撃をしている時にも、忘れずに守備のポジションを取るということだ。

次ページ守備時にも攻撃のイメージができるか!?

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事