「モドリッチに感銘を受けたんだ」38歳の玉田圭司がプロ20年目の進化を遂げた背景

2018年10月11日 今井雄一朗

「自分がチームの潤滑油みたいになれれば良い」

今季20年目を迎える玉田。いまだゴールへの意欲は衰えない一方で「チームの潤滑油」としての役割も担う。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 プロ20年目を迎え、"成人"したとでも言うのだろうか。玉田圭司は、新境地へと向かおうとしている。
 
 ドリブラーでありゲームメーカー。得点もアシストもFKもなんでもこなす攻撃のスペシャリストが、現在見つめているのはハードワークの重要性だ。必要とあらば守備に身体を張り、自陣の危険なスペースを消して回る玉田の姿を見るなんて、肉弾戦の多いJ2で過ごした昨季ですら想像できなかった。
 
「(ロシア・)ワールドカップを見て、特にモドリッチとか一番上手い選手があんなに頑張るんだってことに感銘を受けたんだよね。俺がそういう見方をできたということは、サッカーの感覚が変わってきたということだと思うし、続けていきたい」
 
 8月26日、J1・24節の浦和戦で玉田はとにかくサイドで守備をこなした。左SBの金井貢史の攻撃参加はもはやチームに欠かせぬ武器となっており、その代償として左サイドの裏には広大なスペースが空く。
 
 しかしそこを突かれなかったのは、玉田がきっちりカバーしていたからだった。自陣の深い位置で巧みにパスコースを切り、クロスに身体を投げ出してカットする。「あれはタマさんの経験のなせる業」と佐藤寿人は舌を巻いたが、そもそも玉田が守備に精を出すこと自体が異例。そこで試合後に質問したところ、前述のセリフが飛び出したというわけだ。
 
 成長や進化を望まない選手はいないが、長くキャリアを歩むほど、未開の地を開拓しようとする勇気はしぼんでいく。しかし、ワールドカップ2大会に出場し、かつては攻撃の権化のようだった38歳の大ベテランは自身のプレースタイルを変えようとしているのだ。そんな玉田はこともなげに「自分がチームの潤滑油みたいになれれば良い」とも話す。
 
 得点に関わる仕事は彼の生きがいだ。そこに少しの揺らぎもない。ただ視野はどんどん広がっている。
「以前は自分が点を取る、アシストをする。それをまず考えていたけど、今はそこまでの過程がどうしたら上手くいくのかを考えている」
 

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