神戸はビッグクラブになれるのか? 必要なのは日本代表クラスも迷わず選択するような「格」だ

2018年10月01日 清水英斗

リージョの就任でポゼッションサッカーに対する価値観が変わるかもしれない

神戸は昨年来、ポドルスキ(右)、イニエスタ(中央)を獲得し、さらにはマンチェスター・Cのグアルディオラ監督の師とされるリージョ監督を招聘した。写真:滝川敏之、茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

「真のビッグクラブ」の定義とは何か? パッと思いつくのは、常に優勝争いに絡み、
国際大会でも毎シーズンのように好成績を残すクラブだ。
 
 ただ、ビッグクラブと呼ばれるには他にも重要な条件がある。それは「格」だ。もし、そのクラブからオファーが届けば、誰もが光栄に思い、喜んで受け入れる。移籍を実現するためには手段を選ばず、果てには、現所属先での練習を拒否する選手まで現われるほどの、圧倒的なステータス。予算規模に加え、こうした格こそがビッグクラブの証なのだ。


 常に優勝争いに絡むと言っても、チームは生き物であり、多少の浮き沈みは避けられない。それでも欧州のビッグクラブが安定してトップレベルに留まり続けられるのは、他クラブの戦力を確実に上回るからだ。
 
 あるシーズンに好成績を残したクラブがあれば、すぐにそこから良い選手や監督を引き抜いてしまう。結果、ビッグクラブは戦力を上積みし、ライバルは弱体化していく。ヒエラルキーは覆らない。そんな立ち回りができ、なおかつ周囲が半ば諦めに近い感情でそれを容認せざるを得ない存在が、真のビッグクラブだ。
 
 今のJリーグには見当たらないが、今後、そのステータスをヴィッセル神戸が獲得する可能性はある。鹿島アントラーズのようにタイトルを積み重ねた歴史はないものの、彼らは魅力的かつ野心的なビジョンを掲げ、選手やファンを惹きつける。ここは世界の潮流をキャッチアップする港だとアピールするように──。お金も潤沢だが、お金だけでは動かないスター選手でさえ、プレーする喜びを得るためにこのクラブを選ぶかもしれない。言うならば、マンチェスター・シティ型のビッグクラブ像だ。
 
 その過程で新監督に招聘されたのが、ファン・マヌエル・リージョだ。"哲学者"の異名を取るスペイン人指揮官は、自身が掲げるポゼッション戦術を通して、選手たちにボールを扱う喜びを伝えていくに違いない。それは非常に重要なことだ。ポゼッションサッカーの歴史を持たない神戸は、このスタイルを貫く自信と覚悟がまだない。リージョの就任で、価値観が変わるかもしれない。
 

次ページ目先の勝点を得るだけでなく、クラブとしての評価を高めることが大事

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