第2の小林悠に? 風間監督も代表入りを確信する前田直輝が名古屋で覚醒したワケ

2018年09月27日 竹中玲央奈

風間監督が志向する攻撃サッカーで欠かせない戦力に

今夏名古屋に加入した前田が、早くも6得点・5アシストの活躍を見せている。写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

 風間監督でも教えられないモノを持つ。
 
 名古屋グランパスを率いる風間八宏監督は、選手の"止める、蹴る"をベースとしたボール扱いの技術を高めることに定評があることは言うまでもない。
 
ただ、そんな彼でも簡単には教えられないことがある。
 
「ボールを"運ぶ"ことは教えることはできるけど、ドリブルで相手を抜くことを教えるのは難しい」
 
 ドリブラーには「見える」ものがあると言うが、それは風間監督曰く「感覚」であり、教えられるものではないという。ゆえに、そうした才能を有する選手を見つけてくるという作業が、チームの強化においてはとても重要になる。指揮官は、そんなことを筆者に語ってくれたことがある。
 
 そしてこの夏、名古屋はその"才能"をチームに迎え入れた。背番号25を背負うアタッカー・前田直輝はいまや風間監督が志向する攻撃サッカーにおいて、欠かすことのできない戦力として活躍している。加入して即レギュラーの座を掴み、10試合で6得点・5アシスト。得点に関してキャリアにおける最高が2017年に横浜F・マリノス時代に記録した4得点だと考えると、いかに彼がこのチームにフィットしているかが分かるだろう。
 
 複数人のディフェンスに対しても積極的に仕掛け抜き去るドリブルは、風間監督の言葉を借りれば「教えられない」ものだ。ただ、今の前田の魅力はドリブルだけではない。
 
 東京ヴェルディの下部組織出身ということもあり、ボールを扱う技術についてはかねてより折り紙つきだったが、端的に言えばその技術に磨きがかかった。風間監督のもとで、よりこだわりと緻密さを持つようになったのだ。
 
 横浜時代に彼を取材していた関係者に聞くと「上手いが、粗い」という印象があったという。多少雑に扱っても、持ち得る才能ゆえに、ある程度は行けてしまうといったところか。実際に前田自身もそれは今となって心当たりがあるようだった。
 
「正直、(ボールを受ける時に)ワンタッチ目の勢いで前に行く、という部分があった。そこは自分の癖というか。ワンタッチで叩いてそのままその流れで"ぐい"って入っていっていた」
 
 カウンター時など広大なスペースがある場合は、自身の武器であるドリブルで勢いよく仕掛けても良いかもしれない。ただ、相手の守備がセットされた状態で同じことをやっても網にかかるだけだ。そして、名古屋のサッカーでは後者の局面でも掻い潜るスキルが求められる。
 
 大森征之スポーツダイレクターをはじめとした強化部は、前田はそれができる選手だと見極め、風間監督のもとにいればこれまでJの舞台で見せてきたモノ以上の力が出せると確信し、獲得を決断。結果としてこの思惑は当たった。
 

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