献身性がウリとは言わせない!ゴールの味を思い出した武藤雄樹が”赤い悪魔”を牽引する

2018年09月19日 飯尾篤史

「青木も狙っていたと思うし、タイミングはばっちり」という会心の一撃

横浜戦でチームを勝利に導く決勝点を決めた武藤。約5か月ぶりのゴールだった。写真:金子拓弥(サッカーダイジェスト写真部)

 ミックスゾーンに現れた浦和レッズのストライカー、武藤雄樹は晴れやかな表情だったが、少しばかり照れを含んだ笑みを浮かべていた。
 
「ゴール自体も久しぶりでしたし、決勝ゴールっていうんですかね。僕のゴールで勝利に導くことができた試合はもう思い返せないので、嬉しかったです」
 
 武藤が苦笑するのも無理はない。なにせ公式戦のゴールは今年4月のヴィッセル神戸戦以来、この日のように1点差ゲームの決勝点は16年10月のジュビロ磐田戦まで遡らなければならないのだ。
 
 1−1で迎えた79分、青木拓矢のロングフィードを横浜F・マリノス守備陣の裏で受けると、左足で冷静に蹴り込んだ。横浜のディフェンスラインが高いことはスカウティング済み。「相手が食い付いて来た時に裏を狙う形は練習でも提示されていた」と武藤は明かす。「青木も狙っていたと思うし、タイミングはばっちり」という会心の一撃だった。
 
 実に5か月ぶりのゴールとなったが、その間、武藤がサブに回っていたたわけではない。2シャドーの一角として常にピッチに立っていた。5か月間ゴールから見放されているにもかかわらず、武藤が起用されていたのは、戦術眼が高く、献身性を備えているからに他ならない。迫力のあるプレスを仕掛け、プレスバックも怠らない。サイドに流れてチャンスメイクもすれば、ボールを引き出してゲームメイクにも関われる。
 つまり、指揮官にとっては、実にありがたい存在なのだ。
 
 武藤自身にも監督の要求をこなしているという自負がある。しかし、それだけで終わってしまっているというジレンマを抱えてきた。
 
「プラスαを出せていないと感じていた。やっぱりゴールを決めることこそチームへの一番の貢献だと思うので、ゴールを奪えていなかったのは、苦しかったですね」
 
 武藤はこれまで、ゴールによって自身の未来を切り開いてきた。その最たる例が、ベガルタ仙台から浦和に加入した時だろう。加入1年目の15年にいきなり13ゴールをマークし、首脳陣の、チームメイトの、サポーターの信頼を掴み取ると、栄光の9番まで託されることになったのだ。
 

次ページゴールこそ自身の存在証明

みんなにシェアする
Twitterで更新情報配信中

関連記事