ロシアW杯で絶望の淵に立たされたアルゼンチン代表に生まれた「新たなる希望」とは?

2018年09月13日 チヅル・デ・ガルシア

上々のスタートも、「未来は明るい」というわけではなく…

スカローニとアイマール(左)の両レジェンドに率いられた新生アルゼンチン代表では、ロ・チェルソ(右上)やパラシオス(右下)ら若手の台頭が目立った。 (C) Getty Images

 ロシア・ワールドカップで不快感極まりない後味を残したアルゼンチン代表が、9月の国際Aマッチデーで再スタートを切った。

 W杯後に退任を余儀なくされたホルヘ・サンパオリ監督の後任も決まらないまま、元アルゼンチン代表DFで、現在はU-20代表監督を務めるリオネル・スカローニが監督を代行、同じく代表OBで現U-17代表監督のパブロ・アイマールがアシスタントコーチを担当した新生アルゼンチンは、文字通り新しい顔ぶれが揃ったチームで、7日にグアテマラ、11日にコロンビアと対戦した。

 格下のグアテマラに3-0の勝利を収めた後、ハメス・ロドリゲスやジェリー・ミナこそ不在だったものの、ホセ・ペケルマン元監督(※9月4日に正式に退任を表明)によって築き上げられたベストメンバーに近いコロンビアを相手に、スコアレスドローながら好ゲームを演じたアルゼンチンに対し、国内メディアやファンによる一般的な評価は上々だ。

 とはいっても、手放しに称賛できるゲームだったわけでも、特定の選手が一気に株を上げたわけでも、「アルゼンチン代表の未来は明るい」という楽観的な空気が蔓延しているわけでもない。

 ただ、現在のアルゼンチンは、ロシアW杯後にハビエル・マスチェラーノやルーカス・ビグリアといったベテラン勢が代表引退を決心したことにより、大掛かりな世代交代が不可欠な節目にある。

 さらに、2006年ドイツW杯以来、不均等なままとなっている攻守のバランスを取るため、守備と中盤の本格的な基盤作りに着手しなければならない。

 これらの背景や事情に加え、年内にサンパオリの後任が決まらないことなどを考慮した場合、監督代行のスカローニが実践したプランは非常に建設的であり、絶望的な終わり方をしたロシアW杯後の代表に一筋の光をもたらしたことは紛れもない事実だ。

 アルゼンチン・サッカー協会(AFA)の崩壊に伴って、代表チームがほぼ放置状態となった過去4年間の失敗を繰り返さないためにも、これ以上時間を無駄にすることは許されない――。

 サンパオリのスタッフとしてロシアW杯に同行したスカローニは、その危機的状況を察知し、新監督が正式に決まるまでの間、チームのために何をするべきかを十分理解している。

 今回の親善試合では、監督代行の意図が明確なものとされ、人々から評価されたのは、まさにその部分なのである。

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